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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ネオン・デーモン」

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 (原題:THE NEON DEMON)単に“小手先のギミック”を漫然と積み重ねているだけで、何ら求心力を持ち得ていない。デンマーク出身のニコラス・ウィンディング・レフン監督は「ドライヴ」(2011年)や「オンリー・ゴッド」(2013年)で高い評価を受けたらしいが、私は同監督の作品を観るのは初めてだ。しかしながら、このレベルならば大した作家ではないと感じる。

 南部の田舎町からモデルを夢見てロスアンジェルスにやってきた16歳のジェシーは、偶然にカリスマ的なカメラマンに見出され、大手事務所と契約することに成功する。仕事は順調で、著名なデザイナーやフォトグラファーとの共同作業も全て上手くいく。だが、当然のことながらライバルたちは嫉妬にかられてジェシーを引きずり降ろそうとする。彼女たちの企みに翻弄されていくうちに、ジェシーも内に秘めたドス黒い感情が表面化し、終わりの無い疑心暗鬼と葛藤に苛まれることになる。

 ストーリーらしきものがあるのは中盤までで、あとは作者の手前勝手なイメージの映像化に終始する。もちろん、それ自体が悪いということではなく、映像の組み立て方が面白ければ見応えが出てくるものだが、これが全然ダメだ。どうしようもなく陳腐で、美しくもなければ挑発的でもない。映画学校の学生の習作といい勝負であろう(あるいはデイヴィッド・リンチ監督の「マルホランド・ドライブ」のパロディか)。

 狂言回し役のメイク係の女や、ジェシーが宿泊するモーテルの怪しげなオーナー、そしてなぜかジェシーの部屋に侵入してきたピューマなど、思わせぶりなモチーフは散りばめられているが、まったく映画的興趣として機能していない。どれもただの“思いつき”程度である。

 しかも、演出テンポが悪いために各々のネタの練り上げ不足が露呈しているようで、観る側としてはアクビを噛み殺すばかりだ。映画作りを放り出したと思われる無駄にグロいラストまで、居心地の悪い時間が流れるだけである。

 ただし、主演のエル・ファニングの存在感は出ていると思った。もっとも、内面的演技がどうのという次元の話は今回は埒外であり、本作に限っては見所はスタイリッシュな外観のみだ。自慢のモデル体型が、人工的で底の浅いセットにも十分映えている。一方、クリスティナ・ヘンドリックスやジェナ・マローン、アビー・リーといった他の面子はどうでもいい。さらに脱力したのはモーテル支配人に扮していたキアヌ・リーブスで、何かあると思わせて実は何もない役もよく引き受けたものだと思う。カメラワークは平凡。使われている楽曲もセンスが古くてタメ息が出てきた。

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