(原題:我的少女時代 Our Times)内容の割には上映時間は長いし、ドラマ展開は冗長で余計なシーンも散見されるのだが、年甲斐もなく“胸キュン”してしまうところも多々あり(大笑)、見終わっての印象は良好だ。最近観た「若葉のころ」や「共犯」等の出来の良さも考え合わせると、台湾製の青春ドラマというのは、侮れないレベルに達しているのではないだろうか。
主人公チェンシンは仕事も恋も上手くいかない、不器用で損ばかりしているOLだ。ある日彼女は昔大好きだったアンディ・ラウの歌がラジオから流れてくるのを耳にして、高校時代を思い出す。90年代、男っ気の無い学園生活を送っていたチェンシンにも思いを寄せていた男子がいた。それは、男前の優等生フェイファンだった。
ところがひょんなことから“不幸の手紙”を受け取った彼女は、それを3人の相手に転送。うっかりその中に不良のタイユイの名もエントリーさせてしまったことから、チェンシンは送り主をすぐに突き止めたタイユイに奴隷のようにこき使われるハメになる。一方フェイファンは同級生の美少女ミンミンと仲良くしているが、2人の意味ありげな会話を盗み聞きしたフェイファンとタイユイは、思わず狼狽えてしまう。こうして男女四人の一筋縄ではいかない関係が始まった。
映画のシチュエーションに新味は無い。ヒロインは一見冴えないけどオシャレすると見栄えがするタイプ。相手役は不良ぶっているが実は昔起こった悲劇によりグレてしまっただけで、本当は頭が良くて優しい(また、けっこう二枚目で腕っ節も強い)。フェイファンは実はタイユイの中学生時代の友人で、優男のように見えて芯がある男という、これもよくある設定だ。しかし、この話を90年代という、大昔でも数年前でもない“程良い過去”に持ってくると、途端に輝き出す。誰しもノスタルジックな感慨を覚えるあの頃に物語を放り込んでしまえば、多少の欠点もカバーされてしまうのだ。
もちろん、懐古趣味に乗っかっただけのシャシンではなく、手を変え品を変え、各エピソードを積み上げていく。その中には正直つまらないものもあるのだが、フェイファンとタイユイのいじらしい純情ぶりを強調するパートになると、観る側のヴォルテージも上がっていく。特にレコード店でアンディ・ラウの立て看板に見とれるチェンシンの姿を目にしたタイユイが一肌脱ぐというくだりは、扱いはベタなのだが語り口の巧さによってしみじみとした感慨をもたらす。
フランキー・チェンの演出は才気走ったところは無いが、同じく90年代を舞台にした「あの頃、君を追いかけた」にあったような余計なケレンを廃し、地道にストーリーを追っている。チェンシンに扮するビビアン・ソンは美少女タイプではないものの、豊かな表現力で役柄を自分のものにしており、なかなかの逸材だと感じた。タイユ役のダレン・ワンやディノ・リー、デヴィ・チェンといった他のキャストも万全だ。また時制が現在に戻る終盤には思わぬゲストが登場し、場を盛り上げる。
それにしても、劇中の“女の子が言う「大丈夫」は大丈夫じゃない、「なんでもない」は大アリだ”というセリフはまさに至言だ(笑)。クリス・ホウによる音楽とヒビ・ティエンの主題歌も良い。