(原題:42nd Street )1933年ワーナー・ブラザーズ作品。ハリウッド製ミュージカル映画の嚆矢として知られる作品だが、私は福岡市総合図書館の映像ホールにおける特集上映で、今回初めて観ることが出来た。映画としては時代を感じさせるほどの脱力系のドラマ運びながら、ラスト15分間のミュージカル場面の盛り上がりは目覚ましく、個人的には観て良かったと思っている。
金持ちの老人アブナー・ディロンは女優ドロシー・ブロックに御執心で、彼女を主演に据えたミュージカルを作るために出費することになった。演出を担当するのはかつて名声を得たジュリアン・マーシュだが、実はスランプ気味でメンタル面も危ない状態。それでもカネのため無理して製作に乗り出す。
一方、ドロシーが本当に好きなのは昔から仕事上のパートナーだったパット・デニングであった。そのパットは駆け出し女優のペギーと懇意になっていたが、ドロシーが痴話喧嘩の果てに怪我を負ってしまうと、ペギーに主役の座が回ってくる。すったもんだの末にキャストが決まり、開演まで時間がない状況で一同は稽古に励むのであった。
正直言って映画の大半を占める誰と誰が惚れたの何だのといった展開は、退屈極まりない。ロイド・ベーコンの演出は冗長で、山らしい山もないまま時間だけが過ぎていく。しかしこれは、製作年度を考えると仕方がないかもしれない。当時はこのぐらいのマッタリした流れが丁度よかったのだろう。
ところが、クライマックスのミュージカルの実演になると、一気にヴォルテージは上昇。高名な振付師であったバスビー・バークレーによる見事なステージは、観る者を瞠目せしめるだろう。特にフォーメーションを上からのカメラで捉えるシーンは、上演する劇場の観客が絶対に見ることができない光景であり、映画におけるミュージカルの可能性を示したことで、映画史に残る金字塔だという評価もうなずける。
ジュリアン役のワーナー・バクスターをはじめビービー・ダニエルス、ジョージ・ブレント、ウナ・マーケル、ルビー・キーラーといったキャストは(あまりに古い映画であるため)馴染みがないが、申し分のない仕事をしていると思う。
特筆すべきは脇役としてジンジャー・ロジャースが出ていることで、後年のMGMミュージカルで神業的なパフォーマンスを見せる彼女と同一人物とは思えないほど、身体が絞れていない(笑)。でもまあ、この時代ならば仕方がないだろう。それどころか、早い時期から彼女を起用したプロデューサーの慧眼を認めるべきなのかもしれない。