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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「めぐりあう時間たち」

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 (原題:The Hours )2002年作品。ニコール・キッドマンにアカデミー主演女優賞をもたらした映画。また第53回ベルリン国際映画祭ではキッドマンとジュリアン・ムーア、メリル・ストリープを含む3人が銀熊賞を共同受賞している。

 1920年代と50年代、および2000年代という3つの時代に生きる3人の女性の一日が、小説「ダロウェイ夫人」に誘われてひとつに紡がれるという構成はなかなか面白い(原作はマイケル・カニンガムの小説)。スティーヴン・ダルドリーの演出は前作「リトル・ダンサー」(2000年)より格段の進歩を見せ、緻密なドラマ運びで観客を引き込んでゆく。各キャストの演技は素晴らしく、フィリップ・グラスの音楽も見事の一言だ。シェイマス・マクガーヴェイのカメラによる映像は見応えがある。

 ただし、諸手を挙げての称賛は出来かねる。理由は二つ。まずセリフが説明過多であること。登場人物の口から映画の主題を滔々と語ってもらいたくはない。映像面での暗示に留めるべきだ。とはいっても、ハリウッド映画である以上、極端な作家主義に走るのは好ましくないのだろう。

 もうひとつは、50年代を舞台にしたジュリアン・ムーア扮する中流家庭の主婦のエピソードが納得できないこと。心の病に苦しむヴァージニア・ウルフ(キッドマン)やエイズに罹った恋人(エド・ハリス)との関係に苦悩する女性編集者(メリル・ストリープ)のパートは十分理解できる。しかし、家庭が退屈だからという理由で妊娠中にもかかわらず自殺を図ろうとする主婦の話など作劇上認めるわけにはいかない。

 そういうストーリーに持って行きたいのなら、彼女の中で倦怠感が自傷行為にまで発展する様子を、もっとテンション上げて描くべきではなかったか。それがないからラストのオチも取って付けたような印象しか受けないのだ。もう一歩の脚本の練り上げが必要だったと思う。

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