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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「アズミ・ハルコは行方不明」

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 2016年に公開された日本映画の中では、前田司郎監督の「ふきげんな過去」と並んで最も不愉快極まりないシャシンだ。こういうクズみたいな題材を取り上げたプロデューサー、嬉々としてカメラをぶん回している監督、全国拡大公開させてしまった配給元、みんなまとめてゴミ箱に放り込んでやりたい。

 舞台は栃木県の地方都市。独身で彼氏もいない27歳の安曇春子は、両親と祖母と一緒に暮らしている。祖母は認知症で、それを介護する母のストレスはたまる一方。父親の存在感は限りなく薄い。勤務先の零細企業では、社長と専務から“まだ結婚しないのか?”とセクハラまがいのセリフを投げかけられる。

 ある日彼女は、スーパーでバイトしている元同級生の曽我と出会う。彼は見るからに冴えない男だが、春子は何度か付き合っているうちに懇ろな仲になってしまう。一方、成人式に出席していたキャバクラ嬢の愛菜は、中学時代の同級生であるユキオと再会。しばらくして、同じく同級生の学とも出会う。意気投合した3人は、夜な夜な町中に落書きをして回る。そんな中、町では謎の女子高生グルーブが集団暴行などの狼藉沙汰を引き起こしていた。山内マリコとかいう作家の長編小説(もちろん私は未読)の映画化だ。

 とにかく話が支離滅裂。複数のエピソードが同時進行していくが、それぞれが“ヤマなし、オチなし、意味なし”のパターンで終わる。感情移入できる登場人物は皆無(特に、女子高生の描写なんか痛々しい限り)。

 もちろん、ワケの分からない筋書きやキャラの立った者が出ていない映画を作ってはイケナイというキマリは無い。映画として何らかの興趣が織り込まれていれば、存在価値はある。しかし、本作には見事に何も無い。作者が手前勝手にデッチ上げた映像的イメージ(らしきもの)を、人の迷惑を顧みずに漫然と垂れ流しているだけだ。・・・・というか、そもそも結局アズミ・ハルコは行方不明になっていないのだから呆れる(失笑)。

 この映画を観る限り、松居大悟なる監督には才能のカケラも存在しないように思える。何しろ、ドラマをまともに積み上げようという意思さえ感じられないのだから。

 春子に扮するのは「百万円と苦虫女」(2008年)以来の映画単独主演になる蒼井優だが、どうしてこんなカス映画に出たのか首を傾げるばかり。才能の無駄遣いとしか言いようがない。愛菜を演じるのは今回“とと姉ちゃん”から“キャバ姉ちゃん”に転身した高畑充希だが、下品な水商売女にしか見えない演技力の高さは認めるものの、やっぱり斯様なシャシンに出るのはもったいない。仕事を選んで欲しかったというのが正直なところだ。

 太賀や葉山奨之、落合モトキなどの脇の面子も、どうでもいい仕事しかしていない。1時間40分もの時間を無駄にした感じだが、それでも唯一面白かったのが、終盤近くで流される数分間のアニメーション映像(作者はひらのりょう)。くだんの女子高生どもがこれを観て盛り上がるのだが、けっこう過激な内容で楽しめた。

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