(原題:Django Unchained)冗長な出来で、これがどうしてアカデミー脚本賞を取れたのか分からない。そもそも、娯楽西部劇の分際で上映時間が2時間45分もあること自体、タイトな作劇とは無縁であることを如実に表している。クエンティン・タランティーノもヤキが回ったとしか思えない出来だ。
南北戦争前夜の19世紀半ばのアメリカ南部。元歯科医で賞金稼ぎのシュルツは、次の標的に関する情報を持っている奴隷ジャンゴを奴隷商人から強奪する。当初はターゲットの情報を聞き出すだけのつもりが、気骨のあるジャンゴを気に入ったシュルツは、彼を助手として賞金稼ぎの旅に同行させる。
各地で次々と“実績”をあげる彼らだが、やがて生き別れになったジャンゴの妻ブルームヒルダを探すことになる。彼女は残忍な領主カルヴィン・キャンディのもとにいることが分かり、二人は綿密な奪還計画を練るのだが・・・・。
とにかく、ほとんど盛り上がらない映画だ。ストーリー上で見せ場になるべきシークエンスにおいて、スリルもサスペンスも感じられないのだから困った。活劇場面の迫力もイマイチで、特筆すべきアイデアがまったくないまま漫然と流れていく。
さらに目障りなのは、あっちこっちの映画から引用したと思われるモチーフの羅列である。それをさり気なくやれば別に文句はないが、これが“この部分は映画マニアにウケるところなんだよ!”とばかりにワザとらしく展開しているのは実に不快である。こういう小ネタを必要以上にバラまいたおかげで、各ショット・カットの持ち時間が大幅に水増しされてしまい、挙げ句の果てがこの無駄に長い上映時間である。
本来タラン氏の映画にリアリティを求めること自体が間違いだとは思うが、後半の話のもって行き方はあまりにも杜撰。都合良く(ダラダラと)事が運び、映画が終わってもカタルシスは皆無。繰り返すが、この程度でオスカーをもらってしまっては、候補になった他の脚本家達もいい面の皮であろう。
ジャンゴ役のジェイミー・フォックス、シュルツに扮したクリストフ・ヴァルツ、いずれも凡庸な仕事ぶり。巷で話題になっているらしい悪役キャンディを演じたレオナルド・ディカプリオも、彼としては“軽くこなした”程度で、特筆すべきものはない。
思えば、昔のマカロニ・ウエスタンの「ジャンゴ」シリーズはけっこう面白かった(もちろん、リアルタイムでは観ておらず、多くはテレビ画面でお目に掛かっただけだが ^^;)。あの悪意に満ちた残虐描写と理不尽な筋書きは、禍々しい魅力を放っていたと思う。ところが、それにオマージュを捧げたとされる本作は斯様に脳天気な出来で、本来の「ジャンゴ」のテイストから懸け離れていることも愉快になれない。とにかく、個人的には話にならない凡作だ。