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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「眠狂四郎勝負」

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 昭和39年大映作品。シリーズ屈指の傑作と呼ばれているが、殺陣の仕上がりや映像のキレ具合は大したことがなく、少なくとも「眠狂四郎無頼剣」(昭和41年)の方がずっと上だと思う。しかしながら、職人・三隅研次監督の手際と脚本の巧さは無視できず、観る価値はある作品だ。この頃の大映の定番は粒が揃っている。

 狂四郎はひょんなことから朝比奈伊織という老侍と知り合うが、実は彼は勘定奉行の職にあり、政敵から命を狙われている。黒幕は第11代将軍・家斉の娘高姫で、彼女は名家の御曹司と結婚するものの早くに夫を失って自堕落な生活をしているが、嫁ぎ先の持つ金融や流通に関する利権を握っていた。それに目を付けた赤座軍兵衛をはじめとする腹黒い連中が彼女の周囲をうろついているが、朝比奈はそれを摘発しようとしている。 彼に味方した狂四郎も亡き者にしようと、敵は殺し屋を次々と差し向ける。その中には幕府に囚われている夫を救うため、仕方なく軍兵衛の配下になっている采女も含まれていた。



 とにかく、1時間半にも満たない上映時間の中にさまざまなプロットを詰め込んで、一分の乱れも無くストーリーが進んでいくシナリオには感心する。脚色を担当した星川清司の腕前は確かだ。三隅御大の演出もスムーズで、話が流れるように展開していく。

 だが活劇場面は弱体気味で、弓矢や鉄砲玉が全然狂四郎に当たらないってのは、いくらチャンバラ映画とはいえ、かなりの違和感ある。刀で軽くはじき飛ばす場面ぐらいあってもよかった(笑)。

 主演の市川雷蔵は本作においてもカリスマ性を発揮。ニヒルなスタイルで押し切っているが、敵の罠に簡単にハマって捕らわれる場面もあったりして、無敵ではないところを醸し出してもサマになる(爆)。ヒロイン役はお馴染みの藤村志保で手堅い仕事ぶり。浜田雄史をはじめとする悪役連中も良いが、何といっても朝比奈を演じる加藤嘉が光る。その飄々とした持ち味は、時として雷蔵を凌ぐ存在感を発揮。この頃から演技力には定評があった。

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