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Channel: 元・副会長のCinema Days
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“体育会系”という名の理不尽。

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 2015年12月に自ら命を絶った電通の若手女子社員の労災認定が、2016年9月末に下りた。この件に関してはマスコミはもちろんネット上でもいろいろな意見が提示されているので、改めて私がコメントする必要も無いとは思うが、この大手広告会社も持ち合わせてるらしい“体育会系の企業体質”について、自身の体験を交えて述べてみたい。

 大昔、私が大学4年生になったばかりの頃、就職課が主催して有名企業に勤めている卒業生を招いての意見交換会が何度か行われた。当然私も参加したのだが、その中で強く印象に残ったのは、名の知られた旅行会社に勤務しているOBの講演であった。

 彼は居合わせた学生達に、こういう質問をした。

“海外で団体旅行の添乗員が、もしも急病や思わぬケガに見舞われて業務が続行不可能になった場合、どう対処したらいいと思うか”

 学生側は“現地の支店・営業所に連絡して、代役を立ててもらう”とか“まずは本社の指示を仰ぐ”とか“日本大使館や領事館に助けを求める”とかいった、まあ妥当と思われる答えを返したのだが、そのOBは“すべて違う!”と言ってのけた。さらに彼は大真面目でこう述べたのだ。

“添乗員が勤務中に病気になったり、ケガすることはあり得ない。もしもそういう奴がいるとしたら、それは根性が足りないのだ”

 その時、学生はもとより就職課のスタッフ達も目が点になったことは言うまでも無い。彼の物言いが質問に対する回答になっていないことはもちろんだが、とにかく業務上の危機管理もへったくれもなく、“根性があれば何とかなる”といった精神論で全てを押し切ろうという、その姿勢には違和感しか覚えなかった。もちろん私は、そんな企業に入社しようという気は完全に失せた。

 聞けばそのOBは、在学中は某体育部のキャプテンだったらしい。学力うんぬんよりも、クラブ活動で培った体力と目上の者に対する(盲目的な)忠誠心により就職戦線を勝ち抜いたと豪語していた。正直、私はこの“体育会系のノリ”というやつが苦手である。個人的にスポーツが不得意だったというのもあるが(笑)、何より“無理が通れば道理が引っ込む”ということわざを地で行くような、非合理的な方法論が罷り通る世界とは、出来るだけ距離を置きたいと思っているのだ。

 幸い、私が選んだ就職先は“体育会系の企業”ではなかったのだが(ただし、部署によっては体育会系の雰囲気のところもあるようだが ^^;)、もしも道理よりも体育会系ゴリ押しが優先するような職場に身を置いていたならば、長くは続かなかっただろう。

 さて、報道をチェックする限り、電通というのは“体育会系の企業”そのものであるようだ。どんなに理不尽なことを強要されても、上司・先輩や取引先の命令には絶対に逆らえないらしい。まあ、電通に限らず、この業界は多かれ少なかれそんなものだろう(私も昔、広告会社をいくつか訪問してみてその尋常ならざる雰囲気だけは感じ取れたものだ)。

 はっきり言って、体育会系のノリに徹している企業に明るい未来があるとは思えない。体力だけで勝負していては効果的なイノベーションは望めず、早々に行き詰まってしまうだろう。電通はたまたま昔からの、業界大手としての既成の“利権”がモノを言って現在の地位を維持しているだけだ。今後も発展し続けていくかどうかは疑問である。少なくとも、従来通りの仕事の進め方をしている限り、小手先的な対策で残業時間を規制したぐらいでは事態は好転しないだろう。また犠牲者が出ることは想像に難くない。

 余談だが、くだんのOBが勤めていた会社は、後年別の企業に吸収されて“単なる子会社”に成り果てている。彼がどうなったか、当方の知るところではない。

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