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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ヘイトフル・エイト」

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 (原題:THE HATEFUL EIGHT )画面に隙間風が吹きまくっていたのは、舞台が雪山だからではない(笑)。作劇や役者のパフォーマンスが弛緩しており、全体的に密度が低いスカスカの状態であるからだ。結局、クエンティン・タランティーノ監督はデビュー作「レザボアドッグス」(92年)を超える仕事は出来ないことを再確認した。

 南北戦争が終わってから数年が経った冬、ワイオミング州の山中で元北軍の将校で今は賞金稼ぎのマーキス・ウォーレンは、指名手配犯3人の凍り付いた死体をレッドロックの町に運ぶ途中、豪雪のため立ち往生していた。そこに1台の駅馬車が通りかかりウォーレンは乗り込むが、先客としてそこにいたのは同じく賞金稼ぎのジョン・ルースと、お尋ね者の女デイジーだった。ルースは当局側にデイジーを引き渡し、絞首刑になるのを見るためにレッドロックに向かっていたのだった。



 途中、新任保安官だと名乗るクリス・マニックスも同行することになり、風雪を凌ぐためにミニーの店にたどり着く。ところがミニーは不在で、留守番をしているという見知らぬメキシコ人が出迎える。店には3人の先客が吹雪で閉じ込められていた。ルースはこの男たちの中に、ひょっとしたらデイジーの仲間がいて奪還するチャンスを狙っているのではないかと疑う。外の吹雪はますます激しくなり、一行は不安な夜を迎える。

 隔絶された空間で複数の人間が疑心暗鬼のまま内ゲバに走るという設定は、明らかに「レザボアドッグス」の二次使用である。しかも、緊張感はあの映画の足元にも及ばない。「レザボアドッグス」が100分の上映時間の中に剥き出しの暴力とパッションが凝縮されていたのに対し、本作は何と2時間48分の長尺。このネタで長大な上映時間を引っ張れるはずもなく、事実、最初の1時間は山もオチも無い退屈な寸劇を見せられているようで、眠気を催すばかり。



 ではドラマがようやく動く中盤以降はどうなのかというと、ただ血糊の多いだけのバイオレンス場面が何の工夫も無く並ぶばかり。それぞれのアクションシーンの間における演出リズムが平板であるため、盛り上がりはまるで感じられない。

 もちろん感情移入できるキャラクターは皆無で、果ては終盤近くに何の伏線も張らずに“思いがけない人物”が闖入してくる始末。これでは密室劇という設定そのものが瓦解してしまう。どうせなら、ラストは店を出て押し寄せる敵の一味を相手にハデにドンパチを展開した方が、まだ良かったかもしれない。

 映像面でも見るべきものはなく、「レザボアドッグス」のようなスタイリッシュな構図はまったくない。サミュエル・L・ジャクソンをはじめカート・ラッセル、ジェニファー・ジェイソン・リー、ティム・ロス、マイケル・マドセンと面構えの良いメンバーは集められているが、特に見せ場は与えられていない。印象に残ったのはエンニオ・モリコーネの大仰な音楽のみ。観る価値は無い。

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