(原題:Mission:Impossible Rogue Nation )前作「ゴースト・プロトコル」に比べれば出来は落ちるが、これはこれで楽しめるシャシンだ。少なくとも、今年(2015年)の夏興行の作品の中ではマシな部類に属する。カネ取って劇場で見せるのならば、このぐらいのレベルはクリアしてもらいたい。
正体不明の多国籍スパイ集団“シンジケート”をターゲットにして世界中を駆けずり回っていたIMFエージェントのイーサン・ハントは、ロンドンにある味方との連絡ポイントにおいて不覚を取り、敵に捕まってしまう。そのアジトで彼の前に現れたのは、3年前に死んだはずのエージェントと、ミステリアスな女。拷問が開始されようとしたとき、その女はなぜかハントを助け、脱出の手引きをした後に姿を消す。
一方その頃、CIA長官アラン・ハンリーの主張によってIMFは解体させられ、その従業者はCIAの配下に置かれることになった。しかも、過去に数々の騒動を引き起こしていたハントは、CIAによって国際指名手配を受けてしまう。ハントは捜査当局から身を隠しながら、IMFで懇意だったメンバー数人と共に独自に“シンジケート”に関して情報収集をおこなうが、やがて“シンジケート”とは、殉職したと思われていた各国のスパイ達を集めて作られた犯罪組織であることが分かってくる。
IMFが組織的活動を停止させられ、ハント及びその仲間が追われる身となるという設定は前作の焼き直しであるばかりではなく、過去のいくつかのスパイ映画でも見たようなモチーフだ。各アクションシーンにおいては「ゴースト・プロトコル」の方がアイデアが豊富だったような気がするし、終盤の決着の付け方もいささか拍子抜けだ。
しかし、それでも本作が興味深いのは、主人公達と敵方、そしてCIAとの間にMI6が絡んでくるところだ。アメリカに対するイギリスの立場が如実に窺われるだけではなく、当然ながら「007」シリーズをあからさまに牽制しているあたりは面白い。クリストファー・マッカリーの演出は「アウトロー」(2012年)の頃よりも手慣れてきた感じで、離陸する軍用機のドア外部にハントが張り付くという冒頭の場面をはじめ、ウィーン国立歌劇場での敵味方の駆け引きや、モロッコの山中でのバイクによるチェイスシーン等、見せ場をそつなくこなしている。
主演のトム・クルーズの演技は相変わらずだが(笑)、IMF長官を演じるジェレミー・レナーをはじめサイモン・ペッグ、レベッカ・ファーガソン、アレック・ボールドウィンといった脇の面子がしっかりとフォローしている。ヒットしているとのことで次回作も企画されているが、おそらくトム御大の身体が動く限りこのシリーズは続くのだろう。