Quantcast
Channel: 元・副会長のCinema Days
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2422

「ソロモンの偽証 前篇・事件」

$
0
0

 あくまでも“前篇”なので、これ一本だけで最終的な評価は出来ないのだが、話の辻褄が合っていない点が目立つのは愉快になれない。パート2でよほど頑張らないと、この違和感は払拭できないだろう(正直言って、あまり期待はしていないが ^^;)。

 雪が積もった1990年のクリスマスの朝、城東第三中学校2年A組の涼子と野田は、同じクラスの男子生徒・柏木の遺体を発見する。死因は屋上からの転落だ。警察は自殺と断定し、その方向で事態は収束するかに見えたが、涼子を含めた何人かに他殺を告発した差出人不明の手紙が届く。そこには、札付きの不良生徒として知られる大出とその仲間達が柏木を屋上から突き落としたことが書かれていた。それを嗅ぎ付けたマスコミが不用意に動いたことにより、地域を巻き込んだ大きな騒ぎになる。

 学級委員でもある涼子は、柏木の小学校時代の友人だという他校の生徒・神原と共に、自分達の手で真相を突き止めるため、学校内裁判の開廷を提案する。周りの生徒は最初は冷ややかな態度を取るが、やがて教師陣の無策ぶりを目の当たりにするに及んで、賛同者は増えていく。

 まず腑に落ちないのが、どうして学内裁判が必要なのか説明されていないことだ。もちろん劇中には“そんなことは無駄だ”という意味のセリフも少なからず存在するのだが、主人公たちは“自分の中では事件は終わっていない”とばかりに強行する。これはハッキリ言って、独りよがりなのではないか。

 しかも、件の告発状を送りつけた人間は劇中ではほぼ特定されており、結局は警察の見解が一番筋が通っているように思われる。つまりはヒロイン達の行動には何ら合理的な動機が伴っていないのだ(あるのは感情的な衝動のみ)。さらに、涼子が学内裁判を始めるにあたって警察に証拠を提示するように求めるに至っては失笑するしかない。警察が中学生の“お遊び”に付き合うはずが無いだろう。

 また、大人の側の描き方は何か(小児的な)悪意がこもっているような粗雑さでウンザリする。特にマスコミの扱いは酷い。いくらマスコミ人種は無責任だと言っても、こんな無茶苦茶なことをするはずもない。

 巷では主人公を演じる藤野涼子の評価が高いようだが、“ちゃんと演技しなきゃ!”という思いだけが先行して余裕が見られず、あまり良いパフォーマンスだとは思えない。何より全然可愛くないのはマイナスだ。それよりも神原役の板垣瑞生や、クラスメートの樹里を演じる石井杏奈の方が印象が強い。成島出の演出は取り立てて特筆するようなものはなく、さて、後篇はどうなることやら。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 2422

Trending Articles