(原題:THE EQUALIZER )クロエ・グレース・モレッツが太っていたのには愕然とした(大笑)。売春婦役ということで色気を前面に出すための“役作り”なのかもしれないが、油断していると撮影後も体重が元に戻らなくなる可能性もあるので、気を付けてもらいたいものだ。
ボストンのホームセンターで真面目に働く中年男マッコールは、実は元CIAのエージェントで、ならず者の悪行を目の当たりにすると夜は“仕事人”に変身して悪者どもを片付ける。眠れない夜は深夜営業のカフェで読書をする彼だが、そこで知り合った少女娼婦のテリー(モレッツ)がロシアン・マフィアから酷い目に遭っていることを知り、早速アジトに殴り込んで一味を全滅させる。マフィア側も黙っておらず、最凶の殺し屋ニコライを送り込み、マッコールを亡きものにしようとする。
元々は80年代のテレビドラマで、加えて監督がアントワン・フークアなので、作劇は随分と大雑把だ。いくら元CIAで当局側にコネがあるとはいえ、これだけの大暴れを警察が黙認出来るはずもない。対するマフィアも各方面に手を伸ばして容易に捕まらないように裏工作をしているが、それでも警察が本格捜査に乗り出す気配も無いのは違和感がある。
さらに終盤には主人公が勝手に“海外出張”するに及び、マッコールの持つ“特権”は一体どのぐらい大きいのだろうかと呆れるばかりだ。しかもこの男、強すぎる。ピンチらしいピンチもなく、テキパキと相手を始末していく。要するにスティーヴン・セガールの「沈黙」シリーズと同じ展開なのだが、演じているのが大根のセガール先生とは違うデンゼル・ワシントンという芸達者なので、それほど腹も立たない。
しかも、キャラクター設定は手が込んでいる。マッコールは修行僧のようなストイックな生活を送り、亡き妻の言いつけを守るように古典文学に親しんでいる。“仕事”を行う際は自分から銃を用意せず、現場にある物を上手く使って合理的にやり遂げる。特にクライマックスのホームセンターでの決闘は、店頭に並べてある物を適当に利用して最大限のパフォーマンスを発揮させている。
敵役のマートン・コーカスも凄味があって良い。続編を作るような雰囲気も感じられるが、この調子ならば回を重ねられるだろう。音楽の使い方も気が利いていて、特にグラディス・ナイト&ザ・ピップスの往年のヒット曲「夜汽車よジョージアへ」の使われ方には感心してしまった。