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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ガメラ2 レギオン襲来」

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 96年作品。金子修介監督による平成ガメラ三部作はどれも評判が良いが、このパート2はその中でも質が高い。何がいいかといって、話が理詰めに展開することだ。異星からの侵略者レギオンはなぜ日本にやってきたのか。どうして大都市ばかり狙うのか。なぜ3段階に変態するのか。以前の怪獣映画が行きあたりばったりに舞台を都会に持ってきたのとは違い、実に筋の通った説明が付けられている。

 次に、話が整然としているから、キャラクターも実に無理のない存在感を発揮している。永島敏行と石橋保はまさしく自衛隊員だ。特に永島は威厳と行動力を持ったエリート軍人を見事に体現化している。水野美紀の学芸員も当時のネアカぶり(?)を抑えて的確だし、前作に続いての藤谷文子をエキセントリックな方向に行かせなかったのも正解(ガメラとの交信が薄れてきたという設定が効いている)。そして吹越満のNTT職員がいかにもサラリーマン然としているのには笑った。要するに、全体として無駄なキャラクターがいない。



 そして何といっても自衛隊の大活躍である。今まで映画の中の自衛隊といえばロクな扱われ方をされていなかった。特に特撮映画では“何となく現れるが、いつの間にかやられてしまう”という地位に甘んじていた。ところが今回はどうだ。レギオンとの戦闘シーンはガメラよりも自衛隊の方が長いのだ。

 ガメラを援護したり、“羽根レギオン”を全滅させたりする見せ場もあるが、出てくる自衛隊の誰もがヒネたりおちゃらけたりすることなく、真に“国民の生命・財産を守るのだ”という使命感にあふれ、綿密な対レギオン戦の計画を練り実行していく様子は、これこそ自衛隊のあるべき姿ではないかと感動さえ覚えてしまう。“防衛庁全面協力”のキャッチフレーズもうがった見方抜きにして納得できる。

 さらに映画としての絵作りの上手さ。戦車の進軍に揺れる無人のレストランや、ビルの窓への兵器群の映り込み、戦いの最中にフッと田舎の路傍の風景を挿入させるショットなど、日常と非日常との目を見張るコントラストは凄い(いかにも「パトレイバー」の伊藤和典の脚本らしい)。

 ガメラとレギオンが対峙する時の距離感や、バトルシーンの段取りなど、従来のモンスター映画(ハリウッド製も含めて)では考慮されていなかった点にも目が行き届いているし、派手さはないが的確なSFXも言うことなし。金子修介の久々に弾ける演出で、ラストまでグイグイ引っ張ってくれる。

 今年(2014年)に公開されたハリウッド版「ゴジラ」もまあ悪くはなかったが、この映画に比べれば見劣りがする。とにかく、怪獣映画の何たるかを理解した日本の監督がアメリカで堂々と大作を撮る日を待ちたいものだ。

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