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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「愛と平成の色男」

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 89年作品。バブル全盛期に作られたせいか、まさに軽佻浮薄を絵に描いたようシャシンで、内容も評価出来る部分は全く無い。しかしながら、今から思い返すとこういう映画が堂々と拡大公開されていた“時代の空気”みたいなものを感じ、苦笑してしまう。

 主人公の長島道行は35歳の歯科医だ。昼間は妹のルリ子を助手にして患者の治療に当たっているが、夜はジャズクラブでアルトサックスを吹いている。プレイボーイを気取り、常にガールフレンドはキープしているものの、まだ結婚する気はない。今の恋人から結婚を迫られたので、ルリ子に新興宗教にかぶれた妹を演じさせるという荒業を披露して別れることに成功。



 ある日長島はディスコで由加という女をナンパし、同じ頃にゴルフ練習場で婦警の百合とも知り合う。ところが手違いで由加と百合が病院で鉢合わせしてしまい大騒ぎ。這々の体で逃げ出した長島は、避難先の田舎で恵子という純情な娘と出会う。東京まで付いてきた恵子と、由加と百合も交えて事態は混迷の極に。長島はまたしても遁走することばかりを考えるのだった。

 主演は石田純一で、彼の“羽根のように軽い”キャラクターが全面展開。歯の浮くようなセリフ(及びモノローグ)を連発し、ホイホイと世の中を渡っていく様子を見ると、つくづく“いい気なものだ”と思ってしまう(爆)。今でも若者向けの軽量級映画はコンスタントに作られているが、いい大人を主人公にした脱力系シャシンが罷り通ってしまうというのは、やっぱりこの時代ならではだろう。

 加えて、監督が森田芳光だ。彼のフィルモグラフィの中では下から数えた方が早いレベルだが、同じく80年代に撮った「それから」のように“ガチな失敗作”ではないところが御愛敬か。少なくとも、明るさだけは横溢している。

 共演の鈴木保奈美や武田久美子、財前直見などは可も無く不可も無し。なお、恵子役の鈴木京香はこれがデビュー作。この監督の、若い女優を発掘してくる能力だけは評価したい。

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