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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ボス その男シヴァージ」

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 (原題:SIVAJI-THE BOSS )2007年作品。主演が“スーパースター”ラジニカーントで監督がシャンカールという、快作「ロボット」(2010年)のコンビがその前に撮った映画。福岡市総合図書館映像ホールで上映されたインド映画特集の一本として観ることができた。結論から先に言えば昔ながらのインド製娯楽映画で、「ロボット」のような新奇なエクステリアは無い。その点は不満とも言えるのだが、割り切って観れば楽しめるかもしれない。

 アメリカでソフトウェアの会社を興して成功を収めたシヴァージが、久々に故郷インドに帰ってきた。彼の目的は民衆のために学校や病院を建設し、この土地から貧困を一掃することだ。さっそく事業に乗り出そうてするシヴァージの前に“規制”の壁が立ちはだかる。

 仕方なく役人に多額の賄賂を贈り、何とか建設許可を得たと思ったら今度は既得権益を持つ悪徳業者の親玉が政治家を使ってあらゆる妨害をする。ついには一文無しになってしまったシヴァージは、そこから逆襲に転じる。実在の俳優シヴァージ・ガネーシャンの人生をモデルとしたエンタテインメント大作だ。

 題材だけを見ると社会派の映画かと誰でも思うし、事実そのようなモチーフは劇中かなりのパートを占めるのだが、前半は主人公と彼が一目惚れした女の子とのアバンチュールが延々と展開されるのだから笑ってしまった。しかも、好きな相手に一直線であるのはシヴァージだけではなく、家族揃って先方の家に押しかけて傍若無人に振る舞うあたりがギャグとしてうまく処理されている。この部分だけ見たら、とても社会派映画には見えないのが御愛敬か。

 後半はシヴァージの巻き返しが始まると同時に“アクション大作”になってしまう(笑)。ヘタウマなSFXやワイヤー・アクションが性懲りも無く繰り返され、果たして主人公はどこでこんな体術を身に付けたのだろうかという疑問も脇に追いやり(爆)、ラジニ御大の“クール!”という決めゼリフと共に賑々しい活劇場面が続く。

 とはいえ、社会派としてのアピール度は決して低くはない。役人と一部の資本家による搾取の構図は、現代インド社会の状況をヴィヴィッドに描いているのだろう。そして、何兆ルピーもの“裏金”のやり取りが横行していること、それらは表に出てこないマネーであるから経済マクロにはまったく貢献しないことも示される。このあたりを解決しないとインドは先進国として脱皮出来ないというのは、主人公と同感だ。

 ヒロイン役のシャリヤー・サランはとても可愛い。映画の設定と同じく古風な魅力を持った女優かと思う。音楽はお馴染みのA・R・ラフマーンだが、残念ながら今回は不発。もう少しスコアを練り上げて欲しかった。

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