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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「avec mon mari」

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 99年作品。若者向けの軽量級ドラマをいくつか手掛けて、今やそれなりに有名になった大谷健太郎監督の、デビュー作にして最良の映画。全編に漂う、計算され尽くした脱力系のタッチ(?)が心地良い。

 出版社で気鋭の編集者として日々業務をテキパキとこなしているが家事はまったくやらない美都子と、人当たりが良く家事は得意だが仕事があまり来ないフリーカメラマンのタモツは、結婚3年目の夫婦だ。ある日、タモツがモデルのマユとよろしくやっていると勘違いした美都子は、タモツを家から叩き出す。彼は仕方なくマユの部屋に転がり込むが、実はマユは美都子の仕事仲間である中崎と不倫中だった。かくして複雑な四角関係が形成され、タモツはその中で一人オロオロするばかり。



 何てこともない夫婦の痴話ゲンカを一歩も二歩も引いて淡々とじっくり撮っているのには好感を持った。長回し主体のドキュメンタリータッチの演出にも、まるで無理や気負いがない。会話の面白さとか、映像の構図の的確さなど、特筆すべき点は多々あるが、何より良いのは作者が登場人物たちを見るポジティヴな視線だ。ありふれた日常、でもその中にこそドラマがある。

 キャラクター面では、優柔不断でプニプニしている(?)夫の役柄がサイコー。頼りないけど、しっかりカミさんから頼られているってところが面白い。演じる小林宏史の飄々とした持ち味が良く出ている。中崎役の大杉漣も胡散臭いオヤジをうまく表現していた。美都子に扮する板谷由夏はこれが映画初出演だったが、なかなか堂に入った演技である。辻香織里や寺島まゆみといった脇の顔ぶれも悪くないし、大谷監督自身も出演している。

 それにしても、プロレス好きの嫁御から関節技かけられて無理矢理に離婚届に判を押すというのは本当にコワい。私も気をつけよう(爆笑)。

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