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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ウルフ・オブ・ウォールストリート」

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 (原題:The Wolf of Wall Street )ひたすら疲れる3時間である。ハリウッドでこの映画の主人公のような銭ゲバを描く際、どうしてこうもワンパターンの扱い方しかできないのだろうか。若くして成り上がり、酒と女とクスリに溺れた挙げ句、あえなく自滅。本作もまったく目新しさはない。

 実在の株式ブローカーであるジョーダン・ベルフォートの半生を描いている。22歳でウォール街の証券会社に勤めるが、その会社は間もなく破綻。その後小口取引の専門会社に潜り込み、たちまち頭角を現す。26歳で起業し、圧倒的な成功を収め、その派手な言動で“ウォール街の狼”と呼ばれるようになる。だが、急激な成長の裏には阿漕な商売は付きもので、マネーロンダリングなどの悪事をFBIが放っておくはずもなく、ジョーダンは次第に窮地に追い込まれる。

 主人公がどうしてこのような口八丁手八丁の遣り口を身に付けるようになったのか、なぜ“カネこそすべてだ!”という価値観を信奉するようになったのか、そういう背景に関しては全然言及されていない。つまり映画の中のジョーダンは、ひたすら薄っぺらで狂騒的な人物に過ぎない。そんな奴を追って、3時間も保つはずがないのだ。

 しかも、ジョーダンが経営する会社にダマされ、財産を持って行かれた顧客達も描かれない。ここで“この映画は株屋の生態を扱っているのであり、顧客の側をフォローする必要は無い”とかいう突っ込みが入るのかもしれないが、それは的外れだろう。証券会社だって客商売だ。このような得体の知れない会社が大儲け出来たのも、取引する者が大勢いたからである。そのあたりの構図を浮き彫りにすればドラマに深みが増したはずだが、作者はそんなことに考えも及ばないらしい。

 マーティン・スコセッシ監督と主演のレオナルド・ディカプリオとのコンビは、何やらヤケクソになったように全編これ下品な悪ノリの限りを尽くす。社会風刺も金融ネタもスッ飛ばし、スタッフとキャストは全員ヤクでもキメていたのではと思わせるほどの狂態だ。繰り返すが、こんな有様では長い上映時間を見せきることは出来ない。鑑賞後の印象は実に虚しく、はっきり言って何のために作ったのか分からない映画である。

 ただ一つ興味を惹かれたのが、ジョーダンの会社で毎朝展開される彼の“ワンマンショー”である。下ネタ満載の仰々しいスピーチで社員を鼓舞。それを見た社員達は、熱に浮かされたように突撃セールスに邁進する。まるでカルト宗教だ。某ワタミや某クロスカンパニーの社長が観たら、早速自社の取り組みとして採用するかもしれない(爆)。しかし、ジョーダンの会社は従業員にはそれなりの給与を払っていたようで、そこが日本のブラック企業とは違うところだろう。

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