去る2月8日(土)に福岡市中央区天神にある福岡シンフォニーホールで開催された、日本フィルハーモニー交響楽団の公演に足を運んでみた。東京都杉並区の杉並公会堂をフランチャイズとする同楽団が結成されたのは1956年で、元々は放送局の専属だったが、紆余曲折(新日本フィルとの分裂騒ぎ等)を経て、2013年から運営形態が公益財団法人になった。なお、私がこのオーケストラを生で聴くのは20数年ぶりだ。
指揮はフィンランド出身の若手、ピエタリ・インキネンだ。私としては初めて聞く名前だが(笑)、名匠ネーメ・ヤルヴィに師事していたとのことで、期待は持たせる。曲目はシベリウスの交響詩「フィンランディア」と同交響曲第二番、そしてチャイコフスキーのピアノ協奏曲第一番である。
客演のピアニストとして清水和音を招いてのチャイコフスキーは、残念ながら上出来とは言い難い。さすがに清水のテクニシャンぶりを見せつけるピアノは聴き応えはあるが、オーケストラとのマッチングが悪い。音色がズレたまま終わってしまい、何とも不完全燃焼のパフォーマンスであった。
対して、素晴らしかったのがシベリウスだ。指揮者がフィンランド生まれだけあり、この作曲家のナンバーを自家薬籠中のものにしている感がある。まず、日本のオーケストラからこれだけクリアで明るい音をよく出したものだと感心した。曲運びは実に清新でキビキビとしている。筋肉質で弛緩したところがない。
シベリウスの二番は私も大好きな曲だが、なぜか個人的に満足できるディスクが見当たらない。強いて挙げればカラヤンの旧盤だが、さすがに録音が古くなり今では積極的に聴きたいとは思わない。定番と言われるバーンスタイン盤も悪くはないのだが、あまりに演出過多で胃がもたれる。
今回のインキネン&日本フィルの颯爽とした演奏は、ひょっとして今まで聴いたこの曲の中でも一番ではないかと思うほどだ。速めのテンポで攻めてくるが、余計なケレンは無く、ストレートアヘッドで旋律美を存分に味合わせてくれる。何より透明な響きが心地良い。“深みが足りない”と言う者もいるかもしれないが、純音楽的には目覚ましい訴求力があると思う。
日本フィルは年一回九州公演を行っているが、次回のコンサートも曲目が良ければ行ってみたい。