(原題:ANORA )主演女優がとても健闘していることは分かるが、映画全体としては面白味が感じられない。第77回カンヌ国際映画祭や第97回米アカデミー賞などで高く評価され主要アワードを獲得した作品ながら、個人的には傑出した点を見出せなかった。まあ、世評と自身の感想が食い違うことはよくあるので気にはしないのだが、今回はその“見解の差”はけっこう大きい。
ニューヨークに住む若い女アノーラは、ロシア系アメリカ人のストリッパーだ。ある日彼女は職場のクラブでロシア人の富豪の御曹司イヴァンと出会い、仲良くなる。彼は帰国するまでの7日間、アノーラに1万5千ドルで“契約彼女”になることを提案。それを受入れたアノーラはそれから贅沢三昧の日々を過ごすが、何と最終日に2人はラスベガスの教会で衝動的に結婚してしまう。ところが本国のイヴァンの両親は、息子が水商売の女と結婚したとの噂を聞いて激怒し、ロシアからアメリカに乗り込んでくる。
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本作への高評価のコメントの数々をいくらチェックしても、納得出来るものにお目にかかれない。せいぜいが“ヒロインのハジケっぷりが良かった”という程度のものだ。作品自体に対する深い考察はほとんど無いのではないか。というより、この映画にはディープに突っ込めるような主題やモチーフなどは、最初から無かったと言わざるを得ない。
こういう、無軌道なヒロインが好き勝手に振る舞って騒動を引き起こすハナシというのは、珍しくも何ともないのだ。こういうパターンは日本映画でも昔の成人映画なんかでよく見かけたような気がするし、今村昌平監督の初期作品ではそんなモチーフが最大限に活かされていたと思う。そもそも本作の設定自体にジョン・ランディス監督の「星の王子ニューヨークへ行く」(88年)との類似性が指摘されているようで、何ら目新しいネタが見出せないのである。
さらには中盤以降の延々と続く痴話ゲンカには、観ていて盛り下がるばかり。すべてを投げ出したようなラストに至っては、いい加減面倒臭くなってきた。ショーン・ベイカーの演出には特筆すべきものは無く、彼が2017年に手掛けた「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」のような思い切った仕掛けも用意されていない。
とはいえ、この映画でオスカーを獲得した主演女優マイキー・マディソンの奮闘ぶりは評価出来る。文字通り“体当たり”のパフォーマンスで、今後の活躍も期待されよう。マーク・エイデルシュテインにユーリー・ボリソフ、カレン・カラグリアンといったその他の顔ぶれも悪くない。それにしても、この程度のシャシンが次々に大賞に輝くとは、世の中分からないものだ。
ニューヨークに住む若い女アノーラは、ロシア系アメリカ人のストリッパーだ。ある日彼女は職場のクラブでロシア人の富豪の御曹司イヴァンと出会い、仲良くなる。彼は帰国するまでの7日間、アノーラに1万5千ドルで“契約彼女”になることを提案。それを受入れたアノーラはそれから贅沢三昧の日々を過ごすが、何と最終日に2人はラスベガスの教会で衝動的に結婚してしまう。ところが本国のイヴァンの両親は、息子が水商売の女と結婚したとの噂を聞いて激怒し、ロシアからアメリカに乗り込んでくる。

本作への高評価のコメントの数々をいくらチェックしても、納得出来るものにお目にかかれない。せいぜいが“ヒロインのハジケっぷりが良かった”という程度のものだ。作品自体に対する深い考察はほとんど無いのではないか。というより、この映画にはディープに突っ込めるような主題やモチーフなどは、最初から無かったと言わざるを得ない。
こういう、無軌道なヒロインが好き勝手に振る舞って騒動を引き起こすハナシというのは、珍しくも何ともないのだ。こういうパターンは日本映画でも昔の成人映画なんかでよく見かけたような気がするし、今村昌平監督の初期作品ではそんなモチーフが最大限に活かされていたと思う。そもそも本作の設定自体にジョン・ランディス監督の「星の王子ニューヨークへ行く」(88年)との類似性が指摘されているようで、何ら目新しいネタが見出せないのである。
さらには中盤以降の延々と続く痴話ゲンカには、観ていて盛り下がるばかり。すべてを投げ出したようなラストに至っては、いい加減面倒臭くなってきた。ショーン・ベイカーの演出には特筆すべきものは無く、彼が2017年に手掛けた「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」のような思い切った仕掛けも用意されていない。
とはいえ、この映画でオスカーを獲得した主演女優マイキー・マディソンの奮闘ぶりは評価出来る。文字通り“体当たり”のパフォーマンスで、今後の活躍も期待されよう。マーク・エイデルシュテインにユーリー・ボリソフ、カレン・カラグリアンといったその他の顔ぶれも悪くない。それにしても、この程度のシャシンが次々に大賞に輝くとは、世の中分からないものだ。