(原題:GTMAX )2024年11月よりNetflixから配信されたフランス製のアクション編。特に高評価するようなシャシンではないのだが、あまり堅いことを考えずに眺めていれば退屈せずに過ごせるし、まあ悪くないのではないだろうか。もちろんカネ払って映画館で鑑賞したならばストレスを感じるところだが(笑)、テレビ画面だと何となく許せてしまう。
主人公のソエリは、かつてモトクロスの女王として数々のタイトルをモノにしてきたが、数年前の事故によるトラウマでバイクに乗れなくなり、今は家族がパリ市内で運営するモトクロスチームの世話役を担当している。弟のテオもレーサーだが、成績はいまひとつだ。そんな中、彼は悪名高いバイカー強盗団の犯行計画に巻き込まれてしまう。警察は頼りにならず、ソエリは単身組織に立ち向かう。
犯罪者グループが街中でバイクの改造ショップを営んでいるあたりは噴飯物だが、そういうモチーフに代表されるように本作のドラマの建て付けは緩い。もう少し登場人物たちがシッカリしていれば、そして警察がちゃんと仕事をしてくれれば防げたヤマではなかったのか。そもそも、レースで使うのならばともかく、市販バイクを改造しなければならない必然性は希薄だ。ヘタすれば強盗をやらかす前に違法改造でパクられる。
ソエリと敵方とのやり取りもピリッとせず、全面対決の運びになるまでが冗長だ。とはいえ、アクション場面には非凡なものを感じる。冒頭のモトクロス大会の様子は門外漢の者でも思わず見入ってしまうし、中盤近辺から徐々に挿入されるバイクの疾走シーンの数々は本当に良く出来ている。
クライマックスはもちろんトラウマを克服した(ように見える)ヒロインと、悪者共との一大バトルだ。監督のオリヴィエ・シュニーデルの仕事ぶりは作劇部分はいただけないが、活劇になると目覚ましい働きを見せる。たぶんバイクの取り扱いにも長けているのだろう。アイデアに満ちたショットの連続で飽きさせない。
主演のエイバ・バヤはキツめの表情としなやかな身のこなしで好印象だし、ジャリル・レスペールにジェレミー・ラウールト、ティボー・エブラル、リアド・ベライシュといった脇の面子も(馴染みはないが)良好だ。それにしても先日観た「アドヴィタム」といい本作といい、フランスではけっこうアクション映画もコンスタントに製作されているように感じる。まあ、今のフランス映画界には国外にまで知られた有名スターはいないので、配信ルートでしか紹介されないのは仕方が無いのだろう。