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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「フォールガイ」

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 (原題:THE FALL GUY)とても楽しめた。スタントマンを主人公に設定すると、当然のことながら映画の裏事情をネタとして採用しなければならない。だからストーリー作成に関するハードルは高いのだ。本作はそのあたりが上手く処理されていると同時に、アクション・コメディとしても水準をクリアしている。もっとも、洋画後退のトレンドの中にある日本の興行界では大ヒットは望めないと思うが、この明るい雰囲気はサマーシーズンの番組としては適切だ。

 腕の良いスタントマンのコルト・シーバースは、撮影中の事故によるケガのため一線を退いていたが、ようやく回復し復帰作の現場に赴く。そこで監督を務めていたのは元恋人のジョディ・モレノで、いまだにコルトは彼女に未練がある。そんな彼にプロデューサーから突き付けられたオーダーは、突如失踪した主演俳優トム・ライダーを探すことだった。仕方なくトムの行方を追うコルトだが、図らずもヤバい事件に遭遇してしまう。



 80年代のテレビドラマ「俺たち賞金稼ぎ!! フォール・ガイ」の映画版だということだが、私は元ネタは知らない。だが、それでも本作の理屈抜きの興趣は十分伝わってくる。基本的には、元カノに未練たらたらの野郎がヨリを戻すため奮闘するという単純かつ普遍性の高い話だ。その設定を映画製作のバックステージ物に放り込み、いろいろとエゲツないモチーフを(ライト路線を保ったまま)散りばめるという方向性は正しい。これならばスタントマンという主人公の造型の特殊性が薄まり、平易な面白さを獲得できる。

 それでも、ハリウッドの映画作りの阿漕と思われる点は大々的にフィーチャーされている。まず、クランクインしているのに主役がいないというシチュエーションは呆れるが、これには観客を納得させるだけの“事情”が用意されており、そこにコルトが巻き込まれる筋書きに不自然さがあまりない。

 しかも、主人公が被った事故の“真相”も実に怪しいというネタまである。撮影現場は賑々しいがどこか隙間風が吹いており、この程度のシャシンでも客は十分呼べると踏んでいる製作会社の夜郎自大ぶりも強調される。アクション場面は大味ながら、観る側に突っ込むヒマを与えないほど畳み掛けてくる。クライマックスはもちろんロケ現場の“特徴”を活かしたコルトの大活躍だ。

 監督のデイヴィッド・リーチもスタントマン出身だけあって、見せるツボを心得ているように思う。主演のライアン・ゴズリングをはじめ、ジョディ役のエミリー・ブラント、さらにウィンストン・デューク、アーロン・テイラー=ジョンソン、ハンナ・ワディンガム、テリーサ・パーマー、テファニー・スーら脇の面子も良い仕事をしている。

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