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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「PLAY! 勝つとか負けるとかは、どーでもよくて」

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 作品の題材と出演者たちの面構えから、よくあるライトでウケ狙いの内容空疎な青春ものという印象を受けるかもしれないが、そこは若者像の描出には定評のある古厩智之監督、見応えのある仕上がりだ。特に各キャラクターを取り巻くリアルな状況の扱いには、感心するしかない。もちろん日本の実写版の劇映画で初めてeスポーツを本格的に取り上げたという意味でも、存在価値はある。

 徳島県の阿南工業高等専門学校に通う田中達郎は、1チーム3人編成で競い合うeスポーツの学生全国大会“ロケットリーグ”の出場メンバーを募集していた。そこに応募してきたのが一学年下の郡司翔太だ。ゲームは好きだが熟達者ではない翔太は、ベテランの達郎のスキルに付いていくのがやっとである。続いて達郎はVtuberに夢中の同級生である小西亘にも声を掛け、何とか人数を揃えることが出来た。オンラインで実施される予選を勝ち抜いた3人は、東京で開催される決勝トーナメントに参戦する。実在の男子学生をモデルに作られたドラマだ。



 落ちこぼれ共が頑張って大舞台で活躍するという、スポ根もののルーティンは外見上はクリアしているが、中身は様子が違う。これはタイトル通り“勝つとか負けるとかは、どうでも良い”のである。ただ彼らがプレイ出来ること自体が、大きな“成果”なのだ。彼らの不遇な日常が、eスポーツによってほんの少し変わってくる様子を地に足がついたタッチで綴っていく。それだけ普遍性が高い。

 翔太の家庭は悲惨だ。乱暴者で甲斐性無しの父親と、酷い扱いを受ける母親。翔太とその兄弟たちは、ひたすら首をすくめて耐えるしかない。達郎の父親も何をやっているのか分からず、母親は家計を支えるために過労で倒れそうである。亘にしても家族を信用しておらず、ネット上のキャラクターにしか興味を持っていない。どこにも明るい青春ドラマは無く、それがまた実際ありそうなシチュエーションであるのが辛い。

 プレイ場面は私のようなゲームの門外漢にも十分にスリルが伝わってくるほど巧みだ。しかしながら、大会での彼らの活躍は一過性のものであり、それが終われば改めて厳しい現実に向き合わなければならない。このリアリティには納得してしまう。

 3人を演じる奥平大兼と鈴鹿央士、小倉史也は好調。特に奥平のパフォーマンスは万全だ。山下リオに花瀬琴音、斉藤陽一郎、唯野未歩子、山田キヌヲなどの脇の面子もイイ味を出している。古厩監督は「ロボコン」(2003年)に続いて高専を舞台にしたわけだが、高校とも大学とも違う独特の雰囲気は、かなり効果的かと思う。

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