金子修介監督の資質を承知の上で接すれば、かなり楽しめるシャシンかと思う。反対に彼の持ち味に馴染まない観客ならば、珍妙なクライム・サスペンスとしか思えずに敬遠してしまうかもしれない。私はといえば金子作品との付き合いは長いので、十分に良さは分かった。聞けば中国製のサスペンス・ドラマ「バッド・キッズ 隠秘之罪」(2020年)のリメイクとのことで、通常の国産映画とはひと味違う殺伐とした即物的な空気が漂っているのも納得だ。
沖縄の大企業の幹部である東昇は、義理の両親である社長夫婦を崖の上から突き落として殺害する。完全犯罪を目論んで会社は昇のものになるはずだったが、3人の少年少女がその現場を偶然に撮影してしまう。不遇な境遇にある少年たちは、昇を脅迫して大金を要求。ただし昇も黙っておらず、彼を疑う関係者を次々に始末すると共に、少年たちをも片付けようとする。
昇が犯行に及ぶ出だしのシークエンスから、オーバーでわざとらしい演技とセリフ回しが炸裂して、思わず笑ってしまった。金子監督の持ち味は“マンガの映画化”ならぬ“映画のマンガ化”だ。有り得ない話を徹底してカリカチュアライズし、非現実な次元にまで持って行って“これはマンガですよ”というエクスキューズが通用する構図を作り出してしまう。
本作も同様で、少年たちの手口も昇の所業も、そして過度に閉鎖的な土地柄も、よく考えればかなり強引な御膳立てだ。しかし、作者のマンガ的なアプローチはそれらを正当化してしまう。後半になると善悪の判別などは脇に追いやられ、ゲームのような様相を呈している。
とはいえ、その状態の中にわずかに挿入されたシリアスなモチーフが引き立つ結果にもなる。それはリーダー格の少年の家庭環境や、もう一人の少年と少女との関係性だ。ここがしっかり描かれているから、最後まで話が破綻しない。事件を追う刑事の境遇も有用なモチーフと言えるだろう。昇役の岡田将生は実に楽しそうに悪役を演じ、羽村仁成と星乃あんな、前出燿志の年少組も健闘している。特に星乃は監督のお気に入りのようで、今後も仕事が入りそうだ。
黒木華に北村一輝、江口洋介といった脇の面子も良い。ただし、昇の妻に扮する松井玲奈は幾分力不足。彼女はけっこう演技の場数を踏んでいるのだから、もうちょっと頑張ってほしかった。柳島克己による撮影と谷口尚久の音楽は好調。倖田來未による主題歌は好き嫌いはあるだろうが、まあ良いのではないだろうか。
沖縄の大企業の幹部である東昇は、義理の両親である社長夫婦を崖の上から突き落として殺害する。完全犯罪を目論んで会社は昇のものになるはずだったが、3人の少年少女がその現場を偶然に撮影してしまう。不遇な境遇にある少年たちは、昇を脅迫して大金を要求。ただし昇も黙っておらず、彼を疑う関係者を次々に始末すると共に、少年たちをも片付けようとする。
昇が犯行に及ぶ出だしのシークエンスから、オーバーでわざとらしい演技とセリフ回しが炸裂して、思わず笑ってしまった。金子監督の持ち味は“マンガの映画化”ならぬ“映画のマンガ化”だ。有り得ない話を徹底してカリカチュアライズし、非現実な次元にまで持って行って“これはマンガですよ”というエクスキューズが通用する構図を作り出してしまう。
本作も同様で、少年たちの手口も昇の所業も、そして過度に閉鎖的な土地柄も、よく考えればかなり強引な御膳立てだ。しかし、作者のマンガ的なアプローチはそれらを正当化してしまう。後半になると善悪の判別などは脇に追いやられ、ゲームのような様相を呈している。
とはいえ、その状態の中にわずかに挿入されたシリアスなモチーフが引き立つ結果にもなる。それはリーダー格の少年の家庭環境や、もう一人の少年と少女との関係性だ。ここがしっかり描かれているから、最後まで話が破綻しない。事件を追う刑事の境遇も有用なモチーフと言えるだろう。昇役の岡田将生は実に楽しそうに悪役を演じ、羽村仁成と星乃あんな、前出燿志の年少組も健闘している。特に星乃は監督のお気に入りのようで、今後も仕事が入りそうだ。
黒木華に北村一輝、江口洋介といった脇の面子も良い。ただし、昇の妻に扮する松井玲奈は幾分力不足。彼女はけっこう演技の場数を踏んでいるのだから、もうちょっと頑張ってほしかった。柳島克己による撮影と谷口尚久の音楽は好調。倖田來未による主題歌は好き嫌いはあるだろうが、まあ良いのではないだろうか。