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「みなに幸あれ」

 こりゃヒドい。製作サイドでは、何を考えてこのネタを映画にしようとしたのだろうか。観る側にアピールするものがほとんど無いし、もちろんヒットしそうな要素はどこにも見当たらない。聞けば“日本ホラー映画大賞”なるアワードの第一回金賞受賞作の短編を元に、同じ作者がメガホンを取って長編作品として完成させたものらしい。その短編映画の出来映えは知る由も無いが、商業映画として世に出すからにはプロデューサーによる精査が必須のはず。ところが本作にはそういう形跡は無し。上映時間が89分と短いことだけが救いだろうか。

 東京で暮らす看護学生のヒロインは、久々に祖父母が暮らす福岡県北部の田舎町(ロケ地は田川郡)にやってくる。再会を喜んだのも束の間、彼女は祖父母や近隣住民の言動に違和感を覚え始める。何やら、その家には祖父母以外の“誰か”が住み着いているようなのだ。彼女は幼なじみの青年と共に怪異の正体を探ろうとするが、数日後に到着した両親と弟にもおかしな“症状”が出てくるようになる。

 主人公はこの祖父母の家に子供の頃から何度も泊まっているはず。しかし、この怪異現象に今回初めて遭遇したような素振りを見せること自体が噴飯ものだ。さらに両親もこの現象の存在を承知していたというのだから、呆れた話である。

 この映画のテーマは“誰かの不幸の上に、誰かの幸せは成り立っている”というものらしいが、その表現方法が語るに落ちるような低調なもの。映画は中盤以降はさらに混迷を極め、祖母が“ああいう状況”になったり、山奥に暮らす主人公の伯母が“ああいう有様”だったりと、意味不明のモチーフの釣瓶打ち。ラストなんか、作劇を放り出したかのような体たらくだ。そもそも、この映画はホラーという表看板を掲げながら怖いシーンがひとつも存在しない。総合プロデュースに清水崇が付いていながら“この程度”では、本当に情けなくなってくる。

 監督は下津優太なる人物だが、映画作りの初歩から勉強し直す必要があると思った。主役の古川琴音は頑張っているが、映画自体が低調なので“ご苦労さん”としか声を掛けられない。そういえば古川と相手役の松大航也以外は知らないキャストばかりが名を連ね、しかも演技も皆素人臭い。画面自体も平板で、本当にやる気があるのかと言いたくなる。
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