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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「キリング・オブ・ケネス・チェンバレン」

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 (原題:THE KILLING OF KENNETH CHAMBERLAIN)これはかなりキツい映画だ。正直言えば、食い足りない部分や納得出来ないモチーフもある。しかし、それらを差し引いても、十分に観る価値のある作品であることは確かだ。アメリカ社会が抱える問題の深刻さを炙り出すと共に、無理を通せば道理が引っ込むという、浮世の不条理に頭を抱えてしまう一編である。

 2011年11月19日、ニューヨークの下町のアパートに一人で住む70歳のケネス・チェンバレンは、ある朝誤って医療用通報装置を作動させてしまう。彼は双極性障害を患っており、通報は直ちに担当医療スタッフに繋がる仕掛けになっている。そこから管轄の警察署に連絡が行き、安否確認のため3人の警官がアパートにやってくる。ケネスはドア越しに通報は間違いだと訴えるが、警官たちは信じない。当初は丁寧に対応していた警官たちは、ドアを開けるのを拒むケネスに次第に不信感を募らせ、彼が何か犯罪に関わっているのではないかと疑うようになってくる。



 無実の黒人男性が白人警官に射殺された、実在の事件を映画化したドラマだ。83分の尺だが、これは事の発端からケネスが災難に遭うまでの実際の時間とほぼ一緒である。つまりは映画内の出来事と経過時間とがシンクロするという、いわゆる「真昼の決闘」方式を採用しており、これが臨場感の創出に大いに貢献している。

 警官が到着してからの経緯に関しては、ケネス側にはほとんど落ち度はない。警官が狼藉に及んだ理由は、ケネスがメンタル面でハンデを負っていたこと、そして黒人であったこと以外には考えられない。ケネスが言う通り、いくら“ドアをちょっと開けて確認させてください”と警官が申し出ても、令状の提示も無いのに応じるわけにはいかないのだ。警察が勝手な思い込みにより平気で市民の権利を蹂躙していく様子を見せつけられるに及び、アメリカ社会が抱える人種問題の深刻さを痛感する。

 もっとも、ケネスが親族が近くに住んでいるのに一人暮らしを選択している事情は窺い知れないし、かつて海兵隊員だった彼が現役時代に被ったトラウマに関しても説明不足だ。ただし、それらの瑕疵が気にならないほどデイヴィッド・ミデルの演出には力がある。主役のフランキー・フェイソンは熱演で、見事に不遇な主人公になりきっている。スティーヴ・オコネルにエンリコ・ナターレ、ベン・マーテン、ラロイス・ホーキンズといった他の面子の仕事も万全だ。ラストには関係者の実際の映像と事件の“最終措置”が紹介されるが、これがまたインパクトが大きい。

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