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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」

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 (原題:INDIANA JONES AND THE DIAL OF DESTINY )前作「インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国」の公開から15年も経っているのに、引き続きハリソン・フォードが主人公を演じているという事前情報だけで、期待するのは禁物だなと身構えた。そして実際に作品に接し、その予想は的中した。

 前回はインディの息子のマットが登場し、いよいよ本シリーズも仕切り直しかと思ったら、マットに扮していたシャイア・ラブーフが出られなくなったということで、ハリソン大先生演じる老インディの続投と相成ったらしい。つまりは、世代交代に失敗したのである。ラブーフが登板出来ないのならば別の俳優を持ってきても一向に構わないと思うのだが、諸般の事情とやらでそれが不可になったとか。



 いくらハリソン御大が年の割には元気だといっても、80歳の高齢者にアクションを昔と同じスタイルでやらせるのは、製作者側の自己満足と片付けられても仕方がない。事実、老体に鞭打った挙句に“身体のあちこちが痛い”と自虐的に呟いても、そこにはユーモアは醸し出されずに痛々しさばかりが強調される。これではダメだ。

 それでも映画の内容が面白ければ何とか許せるのだが、これがどうにも弱体気味。時代設定は1969年で、インディが勤める大学の講義の最中に、旧友の娘ヘレナが現れる。彼女は、戦時中にインディがナチスから奪った秘宝“アンティキティラのダイヤル”の片割れの捜索を持ち掛ける。この秘宝は世界を変えるほどのパワーを持っているらしい。一方、かつてのナチスの科学者フォラーもこのお宝を探しており、インディとの争奪戦が勃発するという筋書きだが、古代の謎をめぐるナチスとのバトルという設定自体マンネリだ。

 インディたちの大暴れはワールドワイドに展開するものの、どの活劇場面も既視感がある。ジェームズ・ボンド映画やアメコミ作品などのアクションシーンと御膳立てはさほど変わらない。加えて、ヘレナも途中からインディたちを助ける少年も、ほとんど魅力が無い。特にヘレナはガサツで暴力的で愛嬌に欠け、観ていてウンザリする。善玉キャラが意味も無く次々と殺されるのも気分が悪く、そして何より、インディの息子がすでに戦死しているという話には絶句した。

 ジェームズ・マンゴールドの演出は冗長で、賑やかな画面とは裏腹に退屈だ。結果としてシリーズ最長の2時間半強という尺に達してしまったが、大作感はそれほど出ていない。フィービー・ウォーラー=ブリッジにアントニオ・バンデラス、ジョン・リス=デイヴィス、トビー・ジョーンズら共演陣はパッとせず、目立っていたのが敵の首魁を演じたマッツ・ミケルセンだけという結果には脱力するばかり。

 当然インディ・ジョーンズの冒険もこれで終わりになるわけだが、キャラクターの若返りを自ら拒否した結果が、今後もある程度は観客動員が見込めるシリーズを自ら反故にしてしまったわけで、何とも釈然としない気分になる。

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