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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ブラック・ウィドー」

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 (原題:Black Widow )似たタイトルのマーベル映画があるが、これは別物。87年作品のサスペンス編だ。正直言って、出来は凡庸で取り立てて高く評価すべきものではない。しかしながらキャストの存在感は大したもので、それだけで観て得した気分になる。加えて、題材自体が現時点で考えても割とタイムリーである点が興味深い。

 司法省捜査局の女性エージェントのアレックス・バーンズは、近年立て続けに起こっている富豪の独身男性の死亡事件に疑念を抱いていた。独自で調査を進めた結果、一連の事件の裏にキャサリンという若い女が暗躍していることを知る。ニューヨークの出版王サム・ピーターセンは、キャサリンとの結婚後わずか4カ月で病死しており、その莫大な遺産は未亡人が相続した。新婚6カ月で死去したダラスの玩具王ベン・ダマーズの妻も、やはりキャサリンだった。彼女が金持ちの独身男性と次々に結婚し相手を殺害して巨万の富を得ていると踏んだアレックスは、身分を隠してキャサリンに接近する。



 ひところ我が国でもハヤった“後妻業の女”をネタにしており、こういう遣り口は古今東西絶えることは無いのだろうが、アメリカの上流社会が舞台になると関わる金銭の額もケタ外れだ。それだけターゲットになる側の警戒心は高く実行は容易ではないと想像するが、映画はそのあたりを適当にスルーしている。

 ボブ・ラフェルソンの演出はピリッとせず、展開は平板でサスペンスが醸成されない。後半、アレックスの正体に気付いたキャサリンが罠を仕掛け、相手を窮地に追い込んでいくのだが、ここもドラマティックな見せ場は用意されていない。ラストのドンデン返しも、ハッタリを利かせるのが上手い監督ならばもっと盛り上がったはずだ。

 ただし、主演にデブラ・ウィンガーとテレサ・ラッセルという、当時は“旬”の女優を持ってきたことで映画は何とか求心力を維持する。さらにはサミー・フレーにデニス・ホッパーといったクセ者男優が脇に控えているのも嬉しい。マイケル・スモールによる音楽も悪くないのだが、特筆すべきは名匠コンラッド・L・ホールによる撮影で、陰影を活かした清涼な映像はインパクトが強い。

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