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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ドリーム・ホース」

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 (原題:DREAM HORSE )評判通りの面白さだった。実話を元にしたスポーツ・サクセス・ストーリーで、筋書きは一直線ながらこの手のシャシンでは大正解だ。ヘタに“脇道”の話に拘泥したり、余計な“作家性”を前面に出して観る者を困惑させたりする必要はない。しかも舞台とキャラクターの設定は、元ネタ自体がトレースするだけで興趣を生み出すような訴求力を持っている。何の衒いも無く映像化すれば、好結果が得られるのだ。つまりは企画の勝利だろう。

 英国ウェールズ南部の小さな町ブラックウッドに住む主婦ジャン・ヴォークスは、無気力な夫の相手をしつつ、スーパーでのパートと親の介護に追われる単調な生活を送っていた。ある日、彼女はパブで共同馬主の話を聞き、強く興味を持つ。一念発起して血統の良い牝馬を貯金をはたいて購入するものの、飼育資金まで手が回らない。そこでジャンは周囲の人々に馬主組合の結成を呼びかけ、町全体で競走馬を養う運びになる。

 産まれた子馬は“ドリームアライアンス(夢の同盟)”と名付けられ、地道なトレーニングの末に奇跡的にレースを勝ち進む。やがてその活躍は、町の雰囲気を変えていく。2004年から2009年にかけてウェールズの競馬シーンで好成績を収めた、実在の競走馬とそれを取り巻く人々を描くドラマだ。

 ブラックウッドは元は炭鉱町だったらしいが、閉山後は寂れて住民たちにも覇気がない。そもそもウェールズ自体、イギリスの他の地域に比べて人口当たりの経済的な成果は低い。そんな愉快ならざる環境の中、孤軍奮闘するヒロインが徐々に賛同者を増やし、逆風を跳ねのけていく様子は観ていて気持ちが良い。

 ジャンの他にも、一見頼りなさそうだが実は経験豊富な税理士のハワードや、惰性で人生送っているようだが内心では夢中になれるものを求めている夫のブライアンなど、キャラクターが“立って”いる面子が勢揃いしている。いずれも後ろ向きなポーズは不遇な状況ゆえであり、人間、切っ掛けさえあれば誰しも底なしの行動力を発揮するものだという、ポジティブなスタンスが嬉しい。

 レース場面はかなりの迫力で、日本ではあまり馴染みが無い障害物レースの興趣が存分に味わえる。一時はトラブルでピンチになるが、そこから巻き返すという筋書きは定石通りながら好ましい。ユーロス・リンの演出はスムーズで、ドラマ運びに淀みは無い。主演のトニ・コレットをはじめ、ダミアン・ルイス、オーウェン・ティール、ジョアンナ・ペイジ、ニコラス・ファレル等、キャストは皆好調。キャサリン・ジェンキンスが本人役で出ているのも興味深く、ウェールズ出身のトム・ジョーンズのヒット曲「デライラ」が流れるのも効果的だった。

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