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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ブラックアダム」

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 (原題:BLACK ADAM)正直あまり期待していなかったのだが、実際観てみると面白い。深みは無いものの、単純明快で理屈抜きに楽しめる(ダーク)ヒーロー編だ。少なくとも、筋書きの帳尻合わせに多大な上映時間を費やした挙げ句に成果があがっていなかった「ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー」よりも、数段良心的な内容である。

 北アフリカのエジプト近くに太古の昔から存在していたカンダック国では、5千年前に時の王が大きな力を与えるといわれる“サバックの冠”を作るため、奴隷たちにその原料の鉱石“エテルニウム”を探す過酷な労働を強いていた。そんな中、奴隷の一人がエテルニウムを発見したことにより、反乱が勃発。当事者は異世界でシャザムの力を与えられ超人テス・アダムに変身し王を倒すが、そのまま彼は封印されてしまう。



 そして現代、5千年の眠りからテス・アダムは破壊神ブラックアダムとして復活する。圧倒的なパワーで暴れ回る彼を人類の脅威とみなした国際特殊機関JSA(ジャスティス・ソサイエティ・オブ・アメリカ)は、4人のヒーローをカンダックに派遣し事態の収拾を図る。

 ブラックアダムはDCコミックスが生み出したアンチヒーローだが、今まで映画に登場したことは無かった。JSAの4人のエージェントたちも初めて見る顔だ。ならば取っ付きにくい題材なのかというと、そうではない。ゼロからドラマを立ち上げる必要があるわけで、その分筋書を練り上げなければならない。結果として、この手の映画にありがちな“一見さんお断り”の姿勢が影を潜め、平易な展開に終始しているあたりは評価して良い。

 ブラックアダムの力は強大だが、ちゃんと弱点もある。敵役も“それなりの背景”を持っていて、誰でも納得できる。また、舞台を既存の先進国ではなく現在でも専制政治が行なわれている架空の発展途上国に設定したのも正解だ。これならば、多少浮世離れした筋立ても笑って済まされるだろう。

 ジャウム・コレット=セラの演出は才気走ったところは無いが、的確にドラマを進めている。アクション場面のアイデアは申し分なく、映像のキレも良い。そして何よりキャスティングが出色。主役のドウェイン・ジョンソンはあの面構えとガタイだけで十分な存在感を発揮しているし、オルディス・ホッジにノア・センティネオ、クインテッサ・スウィンデルといったJSAのメンバーに扮している面々も違和感は無い。

 そしてピアース・ブロスナンが儲け役。まさしく引退後のジェームズ・ボンドみたいな出で立ちだ。ラストには“あの人”が思わせぶりに登場するエピローグが付与されているが、DCコミックスの映画化自体の今後が不透明であることが伝えられており、素直に“これからも楽しみだ”と言えないのが辛いところだ。

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