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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「シング・ア・ソング! 笑顔を咲かす歌声」

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 (原題:MILITARY WIVES)監督が「フル・モンティ」(97年)のピーター・カッタネオということで、本作もあの映画と同じ印象だ。つまりは、題材は面白そうだが中身は薄味で求心力に欠ける。観る者に感銘を与えるような骨太な物語性は存在せず、あまりストレスも覚えずサラリと映画は進むのみ。肌触りは良いが、鑑賞後にはあまり記憶に残るようなシャシンではない。

 2009年、アフガニスタン紛争に介入したイギリスは現地に多数の兵士を送り込んでいたが、その家族は軍基地で暮らしながら遠征した者の無事を祈るしかなかった。ストレスを抱える従軍兵士の妻たちは、共に苦難を乗り越えるための活動として合唱を始めることにする。主宰者は大佐の妻ケイトと、思春期の娘に頭を悩ませるリサだ。素人ばかりのメンバーで最初は歌声はまったく揃わなかったが、努力の甲斐あって次第にサマになってゆく。そんな合唱団のもとに、毎年開催される戦没者追悼イベントへの招待状が届く。実話をもとにした一編だ。



 このムーブメントはメディアに注目され、やがて全英を巻き込むようになったらしいが、そのようなドラマティックな御膳立ては出てこない。ただ“何となくそうなった”という印象しか持てない。実際には紆余曲折はあったはずだが、映画では深く描かれず、せいぜいが追悼イベントの当日にちょっとしたトラブルが発生する程度だ。

 キャラクター設定も弱い。ケイトは一人息子をアフガン派遣で亡くしているにも関わらず、あえて平静を装っているが、その喪失感がほとんど伝わってこない。リサも一見賑やかだがその内面は掘り下げられていない。他のメンバーは外見こそバラエティに富んでいるが、存在感に欠ける。そもそも、発表するオリジナルの楽曲はいつ出来てどのように練習したのか分からない。

 それでも、彼女たちが歌う80年代ヒット曲の数々は懐かしいし、イギリスの田舎の風景は味がある。主演のクリスティン・スコット・トーマスとシャロン・ホーガンをはじめ、グレッグ・ワイズ、ジェイソン・フレミング、エマ・ラウンズ、ギャビー・フレンチといった面々は、いずれも申し分のないパフォーマンスを見せており、その点は評価できる。

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