設定やキャスティングは決して悪くない。しかし、映画自体はまるで面白くない。これはひとえに脚本の不備と人物描写の不徹底にある。何をどう表現したいのか、作者はそこをよく吟味しないまま見切り発車的に撮影に入ったように思える。段取りを整えることがプロデューサーの役割だが、その配慮が足りていない。
大阪の下町に暮らす中年男の原田智は、中学生の娘の楓に“指名手配中の連続殺人犯を見掛けたから、情報提供して懸賞金の300万円をゲットしてくる”と告げる。いつもの冗談だと聞き流していた楓だが、翌日父は姿を消してしまう。すでに母を亡くして一人ぼっちになってしまった彼女は必死で智を探すが、ある日雇の工事現場で父の名前を見つける。ところが現れたその人物は、父とは違う若い男だった。戸惑う楓だったが、やがて目にした指名手配犯のポスターに載っていた写真が、くだんの男であることに気付く。
映画はそれから智の失踪劇の前の時制に戻り、妻が難病を患っていたことなどを示しつつ、事の真相に迫っていくのだが、これがどうにも説得力を欠く。殺人犯の山内照巳と智は実は面識があったのだが、2人が知り合うシチュエーションがかなり不自然。そして彼らは共同して“仕事”をするようになるのだが、どうしてそのような按配になったのか、説明がまるで足りていない。
カタギの人間が荒事に手を染めるようになるには高いハードルが存在するにも関わらず、突っ込んで描こうとはしていない。悪事を重ねながら各地を転々とする照巳の行状も釈然とせず、犯行の動機は取って付けたようだし、被害者の白いソックスに執着するのも意味不明だ。そもそも、指名手配のチラシがあちこち貼られている状態で、工事現場で簡単に雇ってもらえるはずがないだろう。
父の行方を追う楓が“偶然に”所在のヒントを掴むのも無理筋なら、智が以前経営していた卓球クラブの旧店舗が“都合よく”犯人側に使われていたというプロットも強引に過ぎる。このような状況で、ラストの親子の姿に涙しろと言われても、それは出来ない注文だ。
主演の佐藤二朗をはじめ、楓に扮する伊東蒼、清水尋也、森田望智、成嶋瞳子と、キャストはいずれも力演。だが、話自体が絵空事であるため皆上滑りしている感がある。片山慎三の演出はピリッとせず、大阪の下町の風景も効果が上がっているとは言い難い。それにしても、伊東と清水、それに森田が顔を揃えるとNHKの朝ドラ「おかえりモネ」を思い出してしまう(笑)。
大阪の下町に暮らす中年男の原田智は、中学生の娘の楓に“指名手配中の連続殺人犯を見掛けたから、情報提供して懸賞金の300万円をゲットしてくる”と告げる。いつもの冗談だと聞き流していた楓だが、翌日父は姿を消してしまう。すでに母を亡くして一人ぼっちになってしまった彼女は必死で智を探すが、ある日雇の工事現場で父の名前を見つける。ところが現れたその人物は、父とは違う若い男だった。戸惑う楓だったが、やがて目にした指名手配犯のポスターに載っていた写真が、くだんの男であることに気付く。
映画はそれから智の失踪劇の前の時制に戻り、妻が難病を患っていたことなどを示しつつ、事の真相に迫っていくのだが、これがどうにも説得力を欠く。殺人犯の山内照巳と智は実は面識があったのだが、2人が知り合うシチュエーションがかなり不自然。そして彼らは共同して“仕事”をするようになるのだが、どうしてそのような按配になったのか、説明がまるで足りていない。
カタギの人間が荒事に手を染めるようになるには高いハードルが存在するにも関わらず、突っ込んで描こうとはしていない。悪事を重ねながら各地を転々とする照巳の行状も釈然とせず、犯行の動機は取って付けたようだし、被害者の白いソックスに執着するのも意味不明だ。そもそも、指名手配のチラシがあちこち貼られている状態で、工事現場で簡単に雇ってもらえるはずがないだろう。
父の行方を追う楓が“偶然に”所在のヒントを掴むのも無理筋なら、智が以前経営していた卓球クラブの旧店舗が“都合よく”犯人側に使われていたというプロットも強引に過ぎる。このような状況で、ラストの親子の姿に涙しろと言われても、それは出来ない注文だ。
主演の佐藤二朗をはじめ、楓に扮する伊東蒼、清水尋也、森田望智、成嶋瞳子と、キャストはいずれも力演。だが、話自体が絵空事であるため皆上滑りしている感がある。片山慎三の演出はピリッとせず、大阪の下町の風景も効果が上がっているとは言い難い。それにしても、伊東と清水、それに森田が顔を揃えるとNHKの朝ドラ「おかえりモネ」を思い出してしまう(笑)。