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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ピクセル」

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 (原題:Pixels)2015年作品。主演のアダム・サンドラー率いる“お笑い一座”の興行みたいな映画である。作品自体には深みも見応えも無く、真っ当なドラマツルギーとは縁遠い。ただし、お手軽な笑劇として割り切れば、あまり腹も立たずに最後まで付き合える。とにかく、中身の濃さを期待することは場違いなシャシンであることは確かだ。

 80年代初頭、当時大流行していたテレビゲームの大会の映像を、NASAが宇宙に向けて発信するという試みが実行された。ところが、偶然それを受信した地球外の知的生命体が、これは明らかに挑戦状であると勘違いしてしまう。それから30数年後、宇宙人は地球側から発信されたゲームのキャラクターに扮して、大々的な地球侵攻を仕掛けてくる。触れたものを全てピクセル化してしまう未知の能力には、地球上の通常兵器はまったく歯が立たない。そこで急遽集められたのが、かつてのゲームおたく共だ。彼らはそれぞれの“得意技”でエイリアンに立ち向かう。

 宇宙人がゲームの画像を見て勝手に挑発行為であると断ずるのは無理があるし、どうしてゲームのキャラクターに似せた格好で攻めてくるのか不明。そもそも、どうすれば地球侵略が達成できるのか分からないまま、何となく場当たり的に暴れ回るという行為に意味があるとは思えない。

 米軍がどうやって相手を撃退できる光線銃(みたいなもの)を開発したのか見当が付かないし、鬼のインドア派であるゲームおたく達がいきなり“実戦”で活躍するというのは、どう考えても無理がある。バトルシーンには緊張感の欠片も無く、ただバタバタしているだけだ。

 しかし本作の眼目はそこではなく、サンドラー扮する主人公のサムと、その取り巻きが織りなす脱力系ギャグの応酬にある。子供の頃は凄腕ゲーマーだったサムは、今はしがない町の電気屋。だがなぜかかつてのゲーム仲間のウィルは大統領になっており、サムはホワイトハウスに顔パスで出入りできるという無茶な設定は笑わせる。

 サムが仲良くなるシングルマザーのヴァイオレットはなぜか軍の中佐で、もう一人のゲームおたくのラドローは遠慮会釈無くサムに絡んでくる。彼らの掛け合い漫才が延々と続くうちに、いつの間にか映画は終わるという段取りには呆れつつも納得してしまう。まあ、監督が「ホーム・アローン」シリーズなどのクリス・コロンバスなので、多くを望むのは不適当だろう(笑)。

 サンドラー以外にはケヴィン・ジェームズやミシェル・モナハン、ピーター・ディンクレイジ、ジョシュ・ギャッド、ブライアン・コックスなどが顔を揃え、お笑いネタの披露に専念している。セリーナ・ウィリアムズとマーサ・スチュワートが本人役で出ているのも愉快だ。

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