(原題:KATE)2021年9月よりNetflixで配信。日本を舞台にした活劇編で、これはやっぱりアメリカ映画に付き物の“えせ日本”が炸裂しているシャシンかと想像したが、それほどでもないので一安心(笑)。ただ、設定には随分と無理があるのは事実。日本はもちろんアメリカにおいても“あり得ない筋書き”だ。しかしながら、ヤケクソ的な開き直りが感じられ、あまり嫌いにはならない。また、キャストの奮闘ぶりも光る。
日本を根城に活動する女殺し屋のケイトは、東京でのヤクザの親分を片付けるミッションを最後に足を洗おうと思っていた。ところが仕事前に敵の奸計に嵌まり、毒を盛られてしまう。残された“余命”はほぼ一日。彼女は短い時間でターゲットを始末するべく、必死の戦いに身を投じる。
ケイトと行動を共にするのが、以前大阪で彼女が手に掛けたヤクザの娘のアニだ。アニは親の敵が誰であることは知らないまま、ケイトの復讐劇に手を貸す。このモチーフはけっこう効果的で、いつアニが真実を知るのかというサスペンスに繋がっている。さらに、この一件には“裏の事情”があったというのも、まあ予想通りながら興味深い。
セドリック・ニコラス=トロイヤンの演出は殊更才気走った箇所は無いが、前半の料亭での立ち回りやカーチェイスの場面は上手く撮っている。しかし、このような街中での大規模な刃傷沙汰が普通に展開するというのは、いかにも無理筋だ。さらには軍隊並に完全武装したヤクザ同士の出入りに至っては、いったいどこの世界の話なのかと思ってしまう。
ただ東京の裏町の描写は「ブレードランナー」を意識しているみたいだが(撮影監督は「ドリームランド」などのライル・ヴィンセント)、取り敢えずは及第点だ。ラストの扱いはベタながら、けっこうグッと来た。主演のメアリー・エリザベス・ウィンステッドは大奮闘で、格闘シーンやガン・ファイトもソツなく見せる。
アニに扮する日系カナダ女優ミク・マーティノーは日本語がたどたどしいが、まあ許せるレベル。ウディ・ハレルソンに浅野忠信、國村隼といった脇の面子は無難に仕事をこなしている。ネイサン・バーによる音楽や使用楽曲の質が大したことが無いのは残念だが、異色ガールズバンドのBAND-MAIDが登場するシーンはけっこうウケた。