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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ジョー・ブラックをよろしく」

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 (原題:Meet Joe Black)98年作品。マーティン・ブレスト監督といえば「ミッドナイト・ラン」(88年)こそ面白かったものの、寡作の割にあとの作品は大したことはない。本作もやっぱり要領を得ない出来で、少しも観る側の内面に迫ってこない。だが、映画のエクステリアだけは極上だ。その意味では存在価値はあると思う。

 最近体調の優れない大富豪パリッシュのもとに、突然見知らぬ客がやって来る。彼はジョー・ブラックと名乗り、パリッシュを迎えに来た死神なのだという。そしてついでに人間界の見物もしたいらしい。戸惑うパリッシュだが、それ以上に驚きを見せたのはパリッシュの娘スーザンだった。なぜなら、ジョーは彼女が以前知り合って意気投合した青年にそっくりだったからだ。

 しかし、ジョーはくだんの男とはまるで性格が違う。それでもスーザンは彼に惹かれていき、ジョーも満更ではない気分になる。それでもパリッシュの命が尽きる日が近付いてくるが、彼はビジネス面でのトラブルにも遭遇してしまう。1934年製作の「明日なき抱擁」を元にしているということだ。

 時空を超越した存在であるはずの死神が、今さら何で下界を見て回りたいのか分からないし、見かけは一緒でも中身は全然違う男にどうしてスーザンが惚れるのかも不明。パリッシュが見舞われる仕事上の不祥事には別に興味を覚えないし、そもそもこのネタで3時間も引っ張ること自体無理がある。M・ブレストの演出は冗長で、サッと流せば10分で済むシークエンスを余計なショットを水増しして2倍以上も引き延ばす。中盤以降は眠気を抑えるのに難儀した。

 ところが、この映画の“外観”は侮れない。まず、この頃一番ハンサムだった主演のブラッド・ピットのプロモーション・フィルムとしての価値は高水準だ(笑)。女子のハートをくすぐるような仕草と表情は、まさに絶品。オード・ブロンソン=ハワードらによる衣装デザインが、これまた効果的だ。そんな彼がスクリーン上で王道のラブコメをやってしまうのだから、彼のファンにとっては言うこと無しだろう。

 トーマス・ニューマンの音楽は素晴らしい。エマニュエル・ルベツキのカメラによる映像は、奥行きがあって美しい。パリッシュ役のアンソニー・ホプキンスをはじめ、クレア・フォーラニ、マーシャ・ゲイ・ハーデンらキャストの演技もサマになっている。まあ、割り切って観るには丁度良いだろう。なお、第19回ゴールデンラズベリー賞でのノミネート作品でもある。

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