(原題:Breakdown )97年作品。B級サスペンス・アクションながら、かなり面白い。基本的にはスティーヴン・スピルバーグ監督の「激突!」(71年)の焼き直しとも言えるが、泥臭い雰囲気で、いかにも“ありそうな話”という体裁を取っているのは本作の方だ。キャストの力演も光っている。
ボストンからサンディエゴまでの大陸横断長距離ドライブ中のジェフとエイミーの夫婦は、田舎道で車がエンストして途方に暮れてしまう。そこに一台の大型トラックが通り掛かり、運転手のレッドは近くのダイナーまでエイミーを乗せてくれるという。その申し出を有り難く受け入れたジェフは、何とか車を修理して後を追ったが、くだんのダイナーにはエイミーはいなかった。
客に聞いても誰も妻を見かけた者はおらず、当のレッドも乗せていないと言い張る。地元の警察に相談しても埒が開かない。しばらくすると、ジェフは怪しいトラックドライバーの一味から身代金を要求される。どうやらエイミーは誘拐されたらしい。金の引渡場所に指定されたガソリンスタンドでレッドを見つけたジェフは、密かに彼のトラックに飛び乗り、エイミーが監禁されている場所へ向かい、レッドたちとの全面バトルに臨む。
アメリカの片田舎には西部劇に出てくるような“ならず者”がウヨウヨしており、当局側もアテにならないアウトローな世界が広がっているという設定はリアリティがある。その構図は現在でもあまり変わらず、地方は都市部から置いていかれて前世紀の未開文明の中にあるという格差社会は、深刻度を増しつつある。
そんな状況に放り込まれた都市生活者のジェフとエイミーは、開き直ってハードボイルドに振る舞うしかない。ジェフは元CIAとか元グリーンベレーとかいった御大層な人物ではなく、普通の男だ。そんな彼が妻ともども野性の本能を露わにして、悪者どもに情け無用の鉄槌を下すというのは観ていて気持ちが良い(笑)。
この映画がデビュー作となったジョナサン・モストウの演出は荒削りだが豪快で、活劇場面は盛り上がる。特に終盤のカーアクションなど、観ていて手に汗を握ってしまった。主演のカート・ラッセルとキャスリーン・クインランは快調。敵役のJ・T・ウォルシュも憎々しくてよろしい。ダグ・ミルサムの撮影とバジル・ポールデュリスの音楽は及第点だ。