Quantcast
Channel: 元・副会長のCinema Days
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2486

「FUNNY BUNNY」

$
0
0
 ストーリー自体は独り善がりで、ほとんど辻褄が合っていない。各キャストの演技も、ワザとらしくてサマにならない。ならば駄作として片付けて良いのかというと、そうとも言い切れない。演劇と映画とを隔てる壁を、無理矢理に突破しようとしている、その意欲だけは買う。

 自称小説家の剣持聡とその親友の漆原聡は、ウサギの着ぐるみに身を包み閉館間際の区立図書館に押し入る。彼らの目的は、図書館に収納してあるという“絶対に借りられない本”を探すことだった。その中に宝の地図が隠してあるという。2人は司書の服部茜と入場者の新見晴を縛り上げ、保管庫を探し回るが見つからない。そこに偶然館内に残っていた遠藤葵が茜と晴を助け出すが、剣持と漆原は侵入した理由を彼らに説明して、あろうことか協力を求めるのだった。



 4年後、駅のホームで線路に飛び込もうとしていた男を、剣持は助ける。その男・菊池広重は茜の大学時代の友人で、かつてはバンドを組んでプロデビューしていた。そこで剣持たちは菊池に前向きになってもらうため、ラジオ局に押し入って電波ジャックを図る。飯塚健(監督も担当)によるオリジナル戯曲の映画化だ。

 いくら閉館時刻とはいえ、広々とした図書館を司書が一人で切り回せるとは思えない。そもそも“絶対に借りられない本”の何たるかを精査しないまま、闇雲にバックヤードを漁りまくるという、剣持と漆原の考えの拙さには閉口する。2人が図書館を襲撃した理由というのも、牽強付会の最たるもので全く共感出来ない。果ては菊池が茜と昔繋がりがあったというのは、御都合主義も良いところだ。

 だが、本作には奇妙な味わいがある。通常、演劇の映画化は舞台特有の雰囲気が映画と合っていないという点が欠陥として指摘されることが多いが、この作品は故意に映画を“舞台劇っぽく”することでブレイクスルーを狙っている。演劇と違って“場面”は多岐に渡っているにも関わらず、舞台劇のテイストを濃厚に焙り出すというのは、一種の“離れ業”と言って良い。別にそれで映画として面白くなるわけでもないが(笑)、手法のプレゼンテーションとしての価値はあるだろう。

 主演の中川大志と岡山天音をはじめ、関めぐみ(久しぶりに見た)、森田想、落合モトキといった出演陣はエロキューションを前面に出してのパフォーマンスに終始する。ただし、菊池が在籍したバンドは“ニルヴァーナの再来”という触れ込みにも関わらず、ニルヴァーナの足元にも及ばない凡庸なレベルで大いに盛り下がった。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 2486

Trending Articles