(原題:THE KILL TEAM )戦地における犯罪を取り上げた映画は過去にいくつも存在していたし、題材としては目新しいものではない。しかし、無論これを“ありふれたネタ”として片付けてはならない。人間誰しも非日常の境遇に放り込まれると、常軌を逸してしまうのだ。何度描いても、描き尽くせない深刻な問題を提示する。ましてや本作で展開されるのは、つい最近の出来事だ。求心力は高い。
2010年、愛国心に燃えて陸軍に志願し、アフガニスタンに渡ったアンドリュー二等兵だったが、着任早々上官が地雷で吹き飛ばされてしまう。代わりに着任したディークス軍曹は華々しい戦果を挙げてはいるが、内実は地元の民間人に言い掛かりを付けて次々と始末するという異常性格者だった。
当初アンドリューはディークスのプロに徹した部下への指導法に感心するが、彼が無実の非戦闘員に罪を着せるためのロシア製武器を密かに多数隠し持っていることを知るに及び、大いに動揺する。しかし、小隊の他のメンバーはディークスに心酔し、平気で違法行為をおこなうようになる。やがてアンドリューは部隊で孤立し、命の危険を意識するようになる。実際に起こった戦争犯罪をベースにしたドラマだ。
映画の時制では2001年のアメリカ同時多発テロ事件から時間が経っているのだが、やっぱりアフガン国内の“テロ組織”を駆逐することが絶対的正義だという風潮が米国民の間で確実に存在していたことに、愉快ならざる気分になる。主人公があえて入隊したのも、そんな背景があったからだ。
しかし、実際には戦場は全て“地獄”であり、正義だの悪だのというお題目は一切通用しない。そんな中、ディークスのように自身の勝手な正義感でレイシズムに走ると、戦争犯罪にしか行きつかないのだ。しかし、そんな極論を信じてしまう小隊のメンバーが存在するように、単純二元論は小難しい理屈を無視できる心地よさをもたらし、ことさら戦地においては“便利”なスキームなのだ。さらに、現地民に対しては容赦しないディークスが、一方で良き家庭人としての顔を持っていることも問題の根深さを表現している。
脚本も担当したダン・クラウスの演出は派手さはないが、人物描写には手抜きが無い。特に、デュークスがアンドリューの忠誠心を疑うようになるくだりには、説得力がある。おそらく予算があまり掛けられておらず、ロケ地も中東近辺ではないと思われるが、あまり違和感はない。1時間半ほどの短い尺ながら、見応えはある。