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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」

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 (原題:BOOKSMART )軽佻浮薄な学園ものと思わせて、実は深いところを突いてくる、なかなか玄妙な作品だ。物語の構成は凝っており、それ自体で一本の映画が出来上がるほどのモチーフを次々と積み重ねてゆく。しかも、観終わってみれば爽やかな青春ドラマとしての手応えも感じる。本国での批評家の高評価も納得する内容だ。

 ロスアンジェルスの高校で生徒会長を務めるモリーとその相棒エイミーは、猛勉強の甲斐あってそれぞれ申し分の無い進路を勝ち取り、卒業まで数日を残すのみとなった。しかし、ひょんなことから遊んでばかりの同級生たちが有名大学への進学や一流企業の内定を得ていることを知り、ショックを受ける。



 ならば卒業前夜だけでもハジけて失った時間を取り戻そうと、生徒副会長のニックの家で開催されるパーティーに乗り込もうとする。ところが、2人ともニックの自宅がどこにあるか知らない。取り敢えず町に飛び出したモリーとエイミーだが、そんな彼らを思いがけないハプニングが続けざまに襲う。

 まず、エイミーが同性愛者という設定は、よくある“卒業パーティーで男子をゲットしようとする女子の話”を巧妙に回避している。さらに、目的地になかなか行き着けない2人の焦りを煽るように、意外な人物たちが登場。やっとパーティー会場にたどり着いたモリーとエイミーを待っていた、思いがけない“事の真相”の数々。起伏のある筋書きには飽きることが無い。

 本作の主題は、先日観た「アルプススタンドのはしの方」に通じるものがある。つまり、人はすべて多面性を持っており、一面的な評価しか出来ないのは“未熟”であるということ。そして多面性を認識することが“成長”だということだ。ただし「アルプス~」が舞台設定を絞って濃密なドラマを展開させていたのに対し、本作はハリウッド映画らしく波瀾万丈のシークエンス展開で見せる。

 これが監督デビューになる女優のオリヴィア・ワイルドの仕事ぶりは達者なもので、序盤こそまどろっこしい点があるが、一度エンジンが掛かると最後まで見せきってしまう。ラストの扱いも秀逸だ。主演のビーニー・フェルドスタインとケイトリン・デヴァーは好調で、メリハリのあるパフォーマンスには感心してしまう。ビリー・ロードやモリー・ゴードン、メイソン・グッディング、ダイアナ・シルヴァーズなどの他の若手キャストも良い仕事をしている。ジェイソン・マコーミックのカメラによる、西海岸らしい(?)明るい映像の雰囲気も捨てがたい。

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