(英題:HOUSE OF HUMMINGBIRD)丁寧に作ってあるとは感じたが、いまひとつピンと来るものが無い。やはりこれは日本と韓国との国民性の違い、それ以上に国情の相違が大きく影響しているのだと思う。主人公を取り巻く環境に関して、私が問題だと思ったことは劇中ではさほど深刻に取り上げられておらず、反対に大したことはないと感じたものが、ストーリー上ではクローズアップされている。作者の立ち位置が異なれば、観る者の評価も変わってくる。そんな当たり前のことを再認識した。
94年のソウル。女子中学生のウニは両親と姉そして兄と一緒に団地の一室で暮らしていた。彼女は学校には馴染めず、付き合うのは別の学校の友人や年上の男子学生だ。両親は小さな餅屋を営んでおり、子供たちと向き合う余裕は無い。ある日、彼女が通う学習塾に新しい女性講師ヨンジがやってきた。彼女は一風変わった雰囲気を持ち、ウニの話を根気よく聞いてくれる。ウニが病気で入院した際には、ヨンジは積極的な言葉で励ますのだった。
10月21日の朝、漢江に架けられた聖水大橋が崩落事故を起こす。ウニはニュースを聞いて、パニックに陥る。なぜならその時間帯は、姉が乗るバスが橋を通過しているはずなのだ。第69回ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門グランプリをはじめ、各種映画アワードを獲得している青春ドラマだ。
ウニの家庭は非常に問題があると思う。両親はあまり子供たちの面倒を見ていないにも関わらず、しっかりと店は手伝わせる。そして長男には過大な期待を寄せる。そのストレスから、長男はウニに対して暴力を振るっている。そもそも、子供たちは親に敬語を使うように言いつけられているのは、何とも異様だ。
これが日本映画ならば、そんな状況が大きく物語を動かす素材になるはずだ。しかし作者は、そのことに対して特に問題意識を持っていないようである。反面、ヨンジの存在は映画では大きく取り上げられるが、彼女自身は別段突出した個性も才能も持っていない。ただ、塾生の話し相手になるだけだ(ついでに言うと、外見もパッとしない ^^;)。この程度の人間が、ヒロインの内面に大きく影響を与えるとは、とても思えないのだ。
ウニの伯父の不遇な人生や、ウニが難病を患うくだりも、別にドラマを大きく動かすモチーフに成り得ていない。男子学生との関係や、下級生の女子との交流も、何とも要領を得ない。そして終盤での聖水大橋の一件は唐突に過ぎる。それがラストの伏線になるとはいえ、無理矢理に入れ込んだ感が強い。
監督のキム・ボラはこれがデビュー作ということだが、確かに破綻の無い仕事は評価出来る。だが、映画の前提自体が理解しがたいものであるため、映画としての求心力は感じられない。なお、主役のパク・ジフは大熱演で、今後を期待させるものがある。キム・セビョクにイ・スンヨン、チョン・インギといった脇の面子も悪くない。ちなみに、アジア通貨危機による韓国経済の大失速は、この映画の舞台になった94年から3年後のことだ。橋の崩落事故はその凶兆だったのかもしれない。