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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ」

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 (原題:Hilary and Jackie )98年イギリス作品。65年に吹き込まれたジャクリーヌ・デュ・プレとバルビローリ&ロンドン響によるエルガーのチェロ協奏曲は間違いなく名盤だ。もちろん、ヨー・ヨー・マとかハレルとか、戦後すぐにリリースされたカザルス御大の力演など他にも良いものはあるし、デュ・プレ自身も70年にバレンボイム&フィラデルフィア管と再録しているのだが、完成度の高さでは65年盤の方が突き抜けている。これを上回る演奏は当分、というか、たぶんもう出ないのではないかと思う。



 で、この伝記映画だが、目を見張るような出来ではないものの、マジメな作りでそれなりに見応えがある。少なくとも、同じく実在のクラシックの音楽家を主人公にした「シャイン」よりは完全に上。監督はドキュメンタリー出身で本作が劇映画デビューとなるアナンド・タッカーだが、ソツのないドラマ運びが光る。

 同じエピソードをジャクリーヌの姉ヒラリーとジャクリーヌ自身の双方の立場からそれぞれ描くというのは悪くないアイデアで、凡人と天才という普遍的なテーマを強調することに成功。そして冒頭とラストをつなぎ合わせる手法も効いている。

 演奏場面は破綻がなく仕上がり、映像も的確である。エミリー・ワトソンは好演。ヒラリーに扮するレイチェル・グリフィスやボレンバイム役のジェームズ・フレインも良い仕事ぶりだ。見終わって、デュ・プレのもうひとつの名盤であるシューマンのチェロ協奏曲のディスクを購入したくなった。

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