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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「デモンズ」

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 (原題:DEMONS)アジアフォーカス福岡国際映画祭2019出品作品。訳の分からない映画ではあるが、妙に観る者の内面に“刺さる”ものがあり、観ていて飽きない。デイヴィッド・リンチ監督の「マルホランド・ドライブ」(2001年)との類似性を指摘する向きもあるだろうが、あの映画ほどのインパクトは無いものの、ネタの掴み具合では独自性を発揮していると思う。

 シンガポールの演劇界で手腕を振るう演出家ダニエルの新作に、新進女優のヴィッキーが起用される。本人はやる気満々で、彼女の兄も大いに喜んでくれる。ところが、同時にヴィッキーは奇妙な幻覚に襲われ始める。しかも、周囲の人間の言動が次第に常軌を逸したものになってゆく。やがて彼女はマレーシアでの公演のため地元を離れるが、その後消息を絶つ。一方、ダニエルの周囲にも異常な言動の人間が多数出没するようになり、夜は悪夢にうなされる始末。ついには、一緒に暮らす同性のパートナーとも意思疎通が出来なくなる。

 「マルホランド・ドライブ」が映画界の魔窟を(外観的に)描写していたのに対し、本作は芸能界に関わった者達の内面に切り込んでゆく。誰かを演じ、ドラマを演出するということは、その作品世界を(一時的にでも)受け入れることである。しかし、それが各人のキャパシティを超えてしまうと、取り返しの付かない事態に陥る。この映画はそんな表現者の苦悩を、露悪的なホラー仕立てで展開させる。

 監督ダニエル・フイの仕事ぶりは、他のホラー映画からの引用も見られるものの、快調に飛ばしておりドラマが停滞することは無い。特にダニエルの事務所を訪ねてきたスポンサー関係者が、突如として奇態な行動を見せる場面などは、インパクトがある。上映時間が83分とコンパクトなのも、的確な処理だと思う。

 ただ、ヒロイン役のヴィッキー・ヤンが全然美人ではないのは、かなり盛り下がる(笑)。観客が感情移入しやすいルックスを備えた役者に任せていれば、もっと好印象だったはず。ダニエルに扮するグレン・ゴエイは熱演で、こっちは見かけが普通である分、不条理な環境に放り込まれた者の悪戦苦闘ぶりが迫真的だった。

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