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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「Diner ダイナー」

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 内容に関してはまったく期待しておらず、見どころは“外観”のみであると割り切っていたので、けっこう楽しめた。まともなドラマツルギーや、ウェルメイドな娯楽性なんかをこの映画に求めてはいけない(笑)。ただ、キャストは多彩なので“俳優を見たい”という観客にはアピール出来ると思われる。

 地味で何の取り柄も無い大場加奈子(大馬鹿な子)は、バイトで食いつなぐ冴えない毎日を送っていた。そんな彼女がネットで偶然“日給30万円の仕事口(ただしリスクあり)”を見つける。嬉々として応募した加奈子だが、それは闇社会の“運び屋”だった。



 そんなヤバい仕事に失敗し、加奈子は悪者どもから危うく殺されそうになるが、思わず“自分は料理が上手いから”生かしておく価値がある!”と口走り、彼女は食堂のウェイトレスとして働かされるハメになる。しかもそこは殺し屋専門のダイナーだった。オーナーシェフのボンベロにこき使われながら、来店する危険な奴らを相手にする加奈子のスリリングな日々が始まった。平山夢明の同名小説(私は未読)の映画化だ。

 設定にはリアリティのカケラも無い。百歩譲って殺し屋専門のレストランなんてのが存在するとして、そこに集まる連中が徹底的にカリカチュアライズされており、名前も日本人のそれではないというのは呆れてしまう。どうやら殺し屋同士の派閥争いがあるようだが、それもカタギの者には与り知らぬハナシに過ぎない。

 ボンベロと加奈子は一緒に働くうちに、何だか良い仲になっていくが、そのプロセスが詳説されることはない。アクション場面は頑張ってはいるようだが、切れ味や段取りは、とても及第点は付けられない凡庸なものだ。まあ、監督が蜷川実花なので作劇に多くを望むのは詮無きことである。



 しかしながら、冒頭にも述べたように本作のエクステリアは見応えがある。何しろ装飾美術担当が横尾忠則だ。多分に毒々しいが、吸引力はある。そして諏訪綾子の監修による料理の描写もよろしい。ボンベロ役の藤原竜也をはじめ、窪田正孝に真矢ミキ、武田真治、本郷奏多、斎藤工、奥田瑛二など、皆楽しそうに異形のキャラクターを演じている。

 加奈子に扮しているのは玉城ティナで、表情はまだ硬いが、身体は良く動くしセリフ回しもシッカリしているので安心して観ていられる。しかし、おそらく日本の若手女優の中で最も可愛い部類に入ると思われる玉城が、序盤で“誰も自分のことを振り向いてくれない”みたいなことを呟くのは無理がある(苦笑)。なお、ラストは出来すぎの感はあるが、鑑賞後の印象は悪くない。

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