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Channel: 元・副会長のCinema Days
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“体育会系”という名の理不尽(その2)。

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 タイトルに“その2”とあるが、ならば“その1”はどこにあるのかというと、2016年の11月である(大笑)。およそ3年ぶりの“続編”のアッブということで、我ながら節操が無いが、とりあえず御容赦願いたい。

 先日、私の親戚筋(仮に、A氏としておく)が勤めている会社に取引先の幹部が来社し、新しく担当になった入社3年目の男性若手社員を紹介したとか。一通り打ち合わせを終えた後、A氏は彼に“出身校はどこ?”と聞いてみたらしい。すると相手は“○○大学です”と答えたが、A氏は驚きを隠せなかったとか。なぜなら、その取引先は歴史も実績もある東証一部上場の有名企業で、彼が卒業した大学はどう考えてもそんな会社が受け入れそうもない“非・有名大学”だったからだ。

 A氏は彼に入社できた経緯を尋ねてみると“僕は学生時代は野球部のレギュラー選手だったんですよ。で、この会社の本社のお偉いさんも若い頃に野球をやっていて、しかも同じポジション。話が盛り上がっているうちに、いつの間にか採用決定です。あははは”とのこと。ついでにA氏は彼に専攻を聞いてみたら“グローバルコミュニケーション何とかカントカ学部”とのことで、一体どういう講義内容なのかと尋ねたら“全然分かりません。何しろ、授業中はずっと寝てましたから。あははは”と答えたらしい。

 それでもA氏は“この業務をやるからには、世界情勢やマクロ経済に精通していなければならないが、それは大丈夫なのか”と尋ねると“何だか難しそうですけど、これから勉強です。あ、でも体力には自信がありますから、残業続きでも平気です。あははは”との返答。ちなみに、彼は入社10年以上の(高スキルの)女子社員より遙かに高い給料を貰っているらしい。

 もちろん、いくら無名大学卒で“スポーツ枠”での入社でも、優秀な人材に育つことは十分ありうることだが、学生時代に完全に学業を疎かにしていたことを堂々と吹聴するような人間が、仕事ができるとは考えられない。実を言えば、過去に私も似たようなケースに遭遇したことがある。相手は某大手企業の管理職だったが、いわゆる“スポーツ名門校”出身で、とにかく気合と根性で業務に当たることを部下に推奨(強要?)しているようなタイプだった。

 働き方改革に伴う雇用環境改善や機会均等、同一労働同一賃金などが取り沙汰されている昨今、いまだにあからさまな体育会系優先や男女差別がまかり通っている事例(それも有名企業で)が存在することは、憂慮すべき事態だ。

 さて、このアーティクルを作成している時点で甲子園球場では全国高校野球大会が開催されている。大会が始まる前(そして、始まってからも)話題になっていたのは、ある有力校が地方予選決勝においてエースを登板させなかったことで敗退したことだ。アマチュアスポーツにあまり関心の無い私が言うのも何だが、これは別に議論になるようなネタではない。日頃選手を間近で見てきた監督が登板を見合わせただけの話で、部外者がガタガタ言う筋合いなど、微塵も無いのだ(注:これがもし、無理に登板させて故障したというのならば、話は別だろう)。

 ところが、今回この“どうでもいい話”が大騒動に発展してしまった。この構図が、アマチュアスポーツ界を取り巻く歪な状況を物語っている。特に悩ましいのが、この決定を下した件の監督を非難し、“腕が折れても投げさせるべきだ”と言わんばかりの極論を展開する者たちだ。某テレビ番組のコメンテーターである元有名プロ野球選手の物言いなどがその典型で、彼は“ケガが怖かったら、スポーツなんかやめろ”とまで断定している。

 さらに、この高校に苦情の電話を入れた者が多数いたそうだが、呆れた話だ。たかが高校生の野球に何を熱くなっているのか。

 まあ、結局それは“甲子園”に代表される感動ポルノと言うべき“美談”や“根性論”に浸りたい者が少なくないということだろう。選手が炎天下にハードなプレイを強いられ、それを観客が日陰のほとんどないスタンドで難行苦行のごとく見つめるという、倒錯した状況が正当化されている。母校の名誉だの郷土の期待だのといった御題目が最優先され、行きつく先は勝利至上主義の指導者による“盲目的な忠誠心を持つ選手”の大量生産だ。

 ビジネス現場に依然残る“体育会系なるもの”の存在理由というのも、なんとなく分かる。つまり、感動ポルノを共有し、御題目の為ならば疑問を抱かず粉骨砕身で取り組んで当然という価値観を持つ体育会系の者たちは、ある意味“使える”からだ。そして“体育会系なるもの”を温存していることこそ、ブラック企業の成立要因の一つになる。

 別に、この状況を打破するために何をすべきだとか、そういうことを言うつもりはない。“体育会系なるもの”は一種の宗教なので、当事者達に改心させるのはほぼ不可能だ。我々に出来ることは、“体育会系なるもの”に近付かないことだろう。ちなみに、親戚筋のA氏はその“体育会系優先の企業”とは距離を置くことを決めたそうだ。

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