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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「暗黒街の顔役」

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 (原題:SCARFACE)1932年作品。今回私は福岡市総合図書館にある映像ホール“シネラ”での特集上映にて鑑賞した。30年代にはハリウッドでギャング映画が盛んに作られたらしいが、この映画はその代表作とされているものだ。確かに、この時代の映画としてはかなり激しい内容で、見応えがある。監督ハワード・ホークスの手腕には、改めて感服する。

 ギャングの大親分ビッグ・ルイ・コスティロの用心棒だったトニー・カモンテは、競争相手のボスであるロヴォに買収されてコスティロを密かに射殺する。コスティロの利権そっくり手にしたロヴォは、トニーを副親分に引き立てる。だが、トニーはその程度で満足するような男ではなかった。街の南側を支配する親分オハラを急襲して片付け、ロヴォの情婦ポピーとも懇ろになる。

 トニーの無鉄砲さに恐れを成したロヴォは彼を始末しようとするが、あえなく失敗。逆にトニーはロヴォを抹殺する。こうして暗黒街の顔役となったトニーだが、大切にしていた妹のチェスカが男と同棲していることを知り、住処に押し掛けて相手を射殺してしまう。しかし、2人は結婚した後で、チェスカは激しく兄を罵る。そんな中、ギャングの悪業に対して世論は反発し、警察はそれを受けてトニーの組織の摘発に乗り出す。

 ポール・ムニ扮するトニーの造型が圧倒的だ。目的のためなら手段を選ばない冷血漢で、悪事をはたらくことに何のためらいも無い。それでいて妹に対しては近親相姦的な感情を抱き、そのディレンマに苦しむことになる。周りの連中もロクでもない奴らばかりで、こいつらが欲望のままに動き回る様子は、まさにスペクタクルだ。

 冒頭、この映画が社会を改善するための問題提起として作られたことが示される。だが、市民達が悪党どもの跳梁跋扈や銃火器の野放図な氾濫に反対するくだりが映し出されるに及び、この問題は現在でも解決されていないことに思い当たり、暗澹とした気分になる。

 ホークスの演出は強靱で、アクション場面はかなりヴォルテージが高い。アン・ヴォーザークやカレン・モーリー、オスグッド・パーキンスといった脇の面子も申し分ない。なお、83年にブライアン・デ・パルマ監督によってリメイクされているが、あっちは3時間の長尺。対して本作は1時間半だ。やっぱり娯楽映画はコンパクトに仕上げるに限る。

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