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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ハンドフル・オブ・ダスト」

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 (原題:A Handful of Dust )88年イギリス作品。女性ファンの高い支持を得た「モーリス」(87年)に続くジェームズ・ウィルビィ主演作だが、個人的にはこちらの方が好きである。とにかく、不条理な状況に追い込まれて身悶えするウィルビィが、マゾヒスティックな興趣を呼び込んで圧巻。好き嫌いは分かれると思うが、見応えはある。

 1932年、田園地方に住む富豪のトニー・ラストは、ロンドンのプライベート・クラブでジョン・ビーヴァーという貧しい若者と知り合う。トニーは彼を自らの邸宅に招くが、田舎暮らしに退屈していたトニーの妻ブレンダはジョンに興味を示し、たちまち2人は懇ろな仲になる。やがてトニーは離婚の危機に陥るが、彼はすべてを忘れるためアマゾンの奥地に旅立つ。



 だが、彼の地に同行した探検家のメッシンガー博士は遭難死し、トニーはジャングルの真っ直中に取り残される。絶体絶命の彼を救ったのが、トッドという現地人だった。トニーは文盲のトッドのために本を朗読してやるが、そのことがまた彼を窮地に追い込んでゆく。

 トニーは英国の上流階級の人間であるが故に、プライドを捨てきれない。カミさんに浮気されても、やせ我慢して辺境の地へ赴く。その苦しい内面をひた隠し、不幸に向かって突き進む屈折した男のダンディズムが、ウィルビィの引きつった表情で描かれるとき、何とも言えないロマンティシズムが画面を覆う。ラストの扱いなど、まさに情け容赦が無い。

 チャールズ・スターリッジの演出は淡々としているが、決して弛緩しておらず、堅実なタッチで主人公を追い込んでゆく。奇しくもジョンに扮するのは「モーリス」でもウィルビィと共演したルパート・グレイヴスで、さすがのトリックスターぶりを発揮。クリスティン・スコット・トーマスやジュディ・デンチ、アンジェリカ・ヒューストン、アレック・ギネスなど他のキャストも実に濃い。

 ピーター・ハナンのカメラによる深みのある映像。ジョージ・フェントンの音楽も的確だ。原作はグレアム・グリーンと並ぶカトリック作家であったイーヴリン・ウォー。彼の作品は読んだことは無いが、いわゆる“冗談のキツい”作風として知られているようで、機会があれば接してみたいと思う。

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