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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「玄海つれづれ節」

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 86年東映作品。ハッキリ言って面白くないのだが、多少興味を惹かれる部分はある。それは、舞台になっている北九州市の(多少場違い的な)風情と、多彩なキャストだ。なお、本作は正月第二弾として公開されており、脱力した内容でもこの封切り時期ならば許されていたのかもしれない。

 横浜で商社の三代目社長である夫の駿介と裕福な暮らしを送っていた山岡ゆきは、駿介が事業に失敗して行方不明になったことから、屋敷を追い出されてしまう。しかも、駿介がヨソの女に産ませた子供のマサルまで押し付けられる。借金取りの緑川月代から夫が九州に行ったことを知らされた彼女は、マサルと共に彼の地に向かう。またその町は、ゆきの出身でもあった。そこで彼女は幼馴染みの一平と再会する。彼は未だにゆきを憎からず思っており、駿介探しを手伝うことになる。やがて当地の映画館の買収騒動に巻き込まれたゆきは、地上げ屋の松藤と渡り合うハメになる。



 上映時間135分の中でさまざまなエピソードが展開されるが、どれも話の辻褄があまり合っておらず、行き当たりばったりに展開するのみ。ヒロインは終盤には都合良く夫を見つけ、また要領よく地元のボスをやりこめる。ストーリーには何のカタルシスも無い。

 しかも、主演が吉永小百合だ。頑張って鉄火肌の姉ちゃんを装ってみたり、なぜかソープ嬢に扮してみたりと、いろいろとやっているが全てサマになっていない。もとより演技力に難のある女優なので気勢が上がらないのは仕方が無いのかもしれないが、いい加減ウンザリしてくる。

 しかしながら、脇のバラエティに富んだ顔ぶれが、何とか退屈を紛らせてくれる。月代役の八代亜紀は“地のまんま”と思われる怪演。一平を演じる風間杜夫も、オーバーアクトをギャグに昇華している。さらには草笛光子や岡本信人、岡田裕介、木内みどり、樹木希林といった面々が味のあるパフォーマンスを披露、そして三船敏郎も出てきて貫禄を見せるのだから、何とか楽しめる。

 北九州市の風景はいつの時代なのかと思わせるが、キッチュな雰囲気は出ていた。出目昌伸の演出は冴えない(まあ、いつものことだが)。あと不可解に思ったのは、この映画は吉田兼好の「徒然草」(第三十八段)を“原作”としていることだ。どう考えても意味のあることだとは思えないのだが、その頃は一種の“ノリ”でそんな企画が罷り通っていたのだろう。

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