(原題:USED CARS )80年作品。ロバート・ゼメキス監督の初期作品だが、後年アカデミー賞を取るほどに“出世”した彼からすれば、本作はもはや思い出したくもない“黒歴史”になっているのかもしれない(笑)。それほどこの映画はグダグダで、質的には語るべきものはない。ただ、向う見ずな勢いだけはあり、ところどころに面白いモチーフは散見される。その意味では、存在価値ナシと片付けるのも早計だろう。
アリゾナ州フェニックスの郊外で道を挟んで建つ2軒の中古車販売会社は、互いに熾烈な販売競争に明け暮れていた。その一つであるニューディール中古車販売の社員ルディは、将来政治家になりたいという野望を抱いており、選挙資金を貯めるために積極的なセールスを敢行。そんな中、社長のルークが心不全で急逝してしまう。
困った社員たちは、社長が長期休暇に入ったことにして、好き勝手に仕事を始める。だが、そんな時に10年間行方不明だったルークの娘バーバラが突然帰宅する。真相を知った彼女は、怒って全員を解雇。自分が社長を継ぐことにする。その隙をついて道向かいの業者の社長ロイ(実はルークの弟)が、あくどい方法でバーバラを窮地に追いやる。以前より彼女を憎からず思っていたルディは、ロイに敢然と立ち向かう。
出てくる連中が、いかにもアメリカの地方在住者らしく、良く言えば皆ノンビリとして、悪く言えば能天気で垢抜けない。そんな奴らが巻き起こす珍騒動も、別に興味を覚えるようなものではない。この映画を観る直前に、たまたま“アメリカの中古車屋は実にいい加減だ”みたいな記事を偶然雑誌で見かけたので、さもありなんという感じである。
ゼメキスの演出はテンポが悪くてパッとしない。それでも、ルディが宣伝のために電波ジャックを実行し、一般家庭のテレビにお下劣な画像が流れるシーンは笑えたし、ロイの陰謀を打ち砕くために、大量の車が店舗に突入する場面はちょっとした見ものだった。そしてラストのオチには思わずニヤリだ。
主役は若き日のカート・ラッセルで、抜け目ないキャラクターを楽しそうに演じている。ルークとロイの一人二役を引き受けるジャック・ウォーデンも、さすがの海千山千ぶり。ただ、残念ながらそれ以外のキャストは精彩を欠く。なお、製作総指揮にスティーヴン・スピルバーグとジョン・ミリアスが名を連ねているのが(今から考えると)何とも場違いでスゴい(^^;)。