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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「パッセンジャー57」

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 (原題:PASSENGER 57)92年作品。確かこの作品は、地方ではスティーヴン・セガール主演の“アクション大作”「沈黙の戦艦」(92年)との同時上映で公開されているが、結果としてはセガール御大の俺様映画よりも数段楽しめた。しかも、上映時間が84分という思い切りの良さ。活劇映画はかくありたい。

 凶悪なテロリストであるチャールズ・レインが、とうとうFBIに拘束される。ロスアンジェルスで行われる裁判のために旅客機で護送されることになったレインだが、密かに乗り込んでいた仲間と共に飛行機をハイジャックする。たまたまその機に搭乗していた航空会社のテロ対策専門官のジョン・カッターは、レイン達に敢然と戦いを挑む。

 狭い機内でのアクションは、乗っている飛行機自体のスピード感もあって淀みなく進む。途中、ジョンが燃料を抜いたため機は直陸を余儀なくされ、一度は地上でのバトルに移行するが、終盤近くに再び舞台が機内に移る。この三部構成は、作劇にメリハリを付ける意味では効果的だ。

 ジョンのキャラクター設定も万全で、かつては“その筋”のプロだったが、妻を事件で失ってからは第一線を退いている。それが偶然にも遭遇した緊急事態によって、昔の血が騒いで戦いに身を投じるという段取りが無理なく表現されている。

 ジョンに扮するウェズリー・スナイプスはさすがの身体能力を発揮し、無茶なシチュエーションで大立ち回りをやらかしても違和感のない造形だ(特に、滑走中の飛行機に車で追いつき、飛び移るシーンは出色)。敵役のブルース・ペインのふてぶてしさも良い。監督のケヴィン・フックスは航空映画にありがちな合成などを極力排し、即物的なリアル感を狙っているのは好感が持てる。

 そして、何より印象的だったのがスタンリー・クラークによる音楽だ。世界的なベース奏者でグラミー賞も獲得している彼だが、ここではノリの良いファンク的なアプローチで大いに盛り上がる。機械があれば、また映画音楽を担当してほしいものだ。

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