(原題:LADY BIRD )あまりにも“普通の映画”なので面食らってしまった。ならば別に観なくても良い映画だとも言えるのだが、アカデミー賞にノミネートされ、他にもいくつかアワードを獲得しているのであえてチェックした次第。ただ、上映時間が1時間半程度と短いので、そこは評価出来よう(世の中には無駄に長い映画が多すぎる ^^;)。
2002年、カリフォルニア州サクラメントのカトリック系高校に通うクリスティンは、自分を“レディ・バード”と名付けて周りにも呼ばせている少し変わった女生徒だ。彼女は母親との仲が上手くいかないせいもあり、この田舎町から抜け出して東部の大学に進学することを希望していた。母親は地元の大学に行かせたいのだが、クリスティンは密かに父親に希望の大学に入るための助成金の申請書を頼んでいた。
ある日彼女は親友ジュリーと一緒に受けたミュージカルのオーディションで、ダニーと出会う。優しい彼を好きになった彼女だが、実はダニーは同性愛者だった。次にクリスティンが好意を持ったのは、バンドのメンバーであるカイルだった。やがて彼女はカイルと同じ人気者グループのジェナと一緒に行動するようになり、ジュリーとは疎遠になる。卒業の日が近付いた頃、東部の大学から補欠合格の通知が届く。だが、そのことでまたクリスティンは母親と衝突するのであった。
ヒロインが通う高校の様子こそ興味深いが、母親との確執や、友人およびボーイフレンドとの関係性などには大して新味は感じられない。これより厳しくて身につまされる青春映画は過去にいくつもあったし、本作が持つアドバンテージは大きくはない。そもそも主人公が勝手に“レディ・バード”と名乗っているという前提には説得力は無く、そのことが終盤の展開の伏線になっていることは分かるものの、必然性が感じられないのは辛い。
彼女の兄は養子であり、その恋人も同居しており、また父親はパッと見た感じは祖父ではないかと思うほど年を取っている。そのちょっと変わった家庭環境を突っ込んで描いた方が面白くなったかもしれない。
グレタ・ガーウィグの演出は前作「20センチュリー・ウーマン」(2016年)よりは幾分滑らかになったが、それでも平板で凡庸だ。上映中は眠気をこらえるのに苦労した。70年代っぽい粒子の粗い画面も、さほど効果的だとは思えない。
主演のシアーシャ・ローナンは「ブルックリン」(2015年)の頃に比べれば少し垢抜けてはいるものの、やっぱりルックスが私の好みではない(笑)。加えて、高校生を演じるには容貌が老けている(再笑)。母親役のローリー・メトカーフは良かったが、あとは印象が薄い。“イケメン枠”で登場のティモシー・シャラメもあまりクローズアップされていない有様だ。
それにしても、こういう“普通の映画”が候補作になるとは、今年(第90回)のアカデミー賞のレベルは高くはないことを、改めて実感した。