(原題:SNIPER)92年作品。比較的低予算の小品だが、キレのいいアクション編で楽しめる。特に、使用される銃火器類、およびその扱い方に対しての粘り着くような描き方は、その手のマニアにとってはたまらないだろう。また、甘さを押し殺したダンディズムの造出にも抜かりは無い。
米軍のベテラン狙撃手であるトーマス・ベケットは、パナマとコロンビアとの国境近くのジャングルで、若手軍人のリチャード・ミラーと共に麻薬組織のボスであるオチョアと政権を狙うアルバレス将軍を“始末”する指令を受ける。将軍の農園に忍び込んだ2人はオチョアを仕留めることには成功するが、敵の逆襲を受けて将軍は取り逃がしてしまう。一度は撤退した2人だったが、そこへ武装ゲリラが現れ、ベケットを拉致する。恐怖に負けそうになっていたミラーだが、何とか自分を取り戻し、ベケットを救うために単身農園に乗り込む。
ライフルから発射される銃弾をアップでとらえたショットが挿入されるが、これがなかなか効果的だ。別に手法としては新しくはないが、それでも観る者の目を奪うのは、グダグダ台詞を並べるよりも一発の銃弾で全てを語ってしまうようなドラマの組み立てが成されているからだ。それらが表現するものは、ベケットのプロとしての矜持、そしてミラーの意地である。
ライフルに取り付けられたスコープから覗く映像の扱いに至ってはさらに顕著で、一発で標的を捉えるベケットの視線に対し、ミラーは逡巡する。だが、やがて迷いがなくなるあたりにミラーの成長を暗示させる段取りはさすがだ。もちろん、やたら長い回想シーンが挿入されることや、蕩々と作戦の概要が述べられることも無い。また、ベケットの首にぶら下がっている相棒たちの形見である認識票の束や、彼が捕らえられる前に砂の中に落としていく最後にひとつ残った弾丸など、小道具の処理も上手い。
ルイス・ロッサの演出は淀みがなく、1時間40分というタイトな上映時間も相まって、凝縮されたドラマを堪能出来る。主演のトム・ベレンジャーとビリー・ゼインは好演。“ベテランと若手”という組み合わせは定番ながら、決してマンネリに陥らないパフォーマンスを発揮している。ビル・バトラーのカメラが捉えた密林の濃厚な風景も良い。